暗くて静かでスローで、舞台は大昔の欧州の田舎町といった眠くなる要素満載の恐怖映画。前半部分は絶望的につまらないです。13点
デビルズ・バスのあらすじ
村で起こった悲劇もアグネスの精神に影を落とした。隣人のレンツが自殺し、その遺体は罪人として埋葬を拒否されたのだ。司祭は「自殺は殺人よりも重い罪」と説き、アグネスはその言葉に強い衝撃を受ける。彼女の心はますます重くなり、孤独と絶望が包まれるのだった。
デビルズ・バスのキャスト
- アーニャ・プラシュグ
- ダービド・シャイド
- マリア・ホーフステッター
デビルズ・バスの感想と評価
「グッドナイト・マミー」、「ロッジ・白い惨劇」で知られるベロニカ・フランツとセベリン・フィアラ監督による時代劇ホラー。テンポが絶望的に悪く、さらにストーリーは説明不足で、時代背景を知ってから見ないとよく分からない退屈な映画。
舞台は18世紀半ばのオーストリアの閉鎖的な村で、その時代自殺は最大の罪とされ、自殺者の魂は永遠の地獄に落ちると信じられていました。しかし、殺人を犯して悔い改め、処刑されることで罪を清め、天国に行けると考える「代理自殺」という抜け道が存在した、という歴史的背景を基に描かれた話で、なぜかその背景をオープニングではなく、エンドロールのテロップで説明するという致命的なミスを犯しています。
そのためあらすじや事前に情報を掴んでいない視聴者にとってはなんのこっちゃ分からないストーリーになっていてまあつまらなかったです。プロローグで女性が赤ん坊を滝の上から投げ捨て、その罪を告白し、処刑されることで天国に行けるという歪な信仰心をもっと分かりやすく伝えないと、メインのストーリーとそれがなかなかリンクしていかないですよね。
ただ、万が一、最初に説明が入ったとしてもつまらないのは変わらなかったかもしれません。展開がスローすぎて眠くなるのが避けられないからです。最初の1時間ぐらいは夫に抱いてもらえないヒロインの欲求不満生活を見せるだけで、まあきつかったです。
そもそもあの時代の娯楽も何もない田舎町の新婚の男女がセックスレスになるのかよっていう疑問点も浮かびましたね。もし何らかの理由や事情があるならそこにも深く触れないと。夫が変な趣味の持ち主だったとか。
物語が動きだすのは1時間を超えたあたりでヒロインが精神を病んでからのことで、夫と姑に理解してもらえない彼女が絶望と孤独と鬱に悩まされて死にたくなり、でも自ら命を絶つのは大罪だからほかの人を殺して、告解を受け、処刑してもらったほうがいいという結論に達するのがだいたいの流れです。
いわばこの時代の宗教観によって「代理自殺」という理不尽かつ自分勝手で恐ろしい行動に出る人々が実際にいたんですよっていう話で、そのゴールにたどり着くまでの過程をお色気もスリルもなく、ダラダラ描いたのが失敗でしたね。ヒロインの心理的崩壊を丁寧に描いたって言えなくもないけど、多少なりともエンタメ性を含めないと今の時代はだめだよ。特に時代劇なんてただでさえ見るのがきついんだから。
それとヒロイン以外のキャラクター構築が甘く、夫にしても姑にしてももっと分かりやすいゴリゴリの悪党に描いてもよかったかもしれませんね。悪気がないから余計に怖いという見方もできますが、夫と姑のキャラが弱かったのもこの映画の物足りなさの原因の一つでした。
赤ん坊を心から望んでいたヒロインがもっと滅茶苦茶やってもよかったですね。村中の男たちと不倫するとか。あれだけ精神を病んでるのに、人の赤ん坊を連れて帰ってきて、夫に「返してこい」って言われたら素直に従うのには拍子抜けしちゃいました。
「グッドナイト・マミー」が良質なホラーだっただけにどうしてもそれと比べてしまうというのもあるんでしょうか。ハリウッドホラーとは違って、静かな欧州ホラーも嫌いじゃないけど、これは静かすぎました。絶対寝ちゃうって。
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