ジャンルの掛け合わせには成功しているけど、演出がいまひとつなフランス映画。珍しいもの見たさで見る程度の作品です。45点
CLIMAXクライマックスのあらすじ
1996年、ダンスカンパニーの振付師セルヴァとプロデューサーのエマニュエルは各地から優秀なダンサーを募集した。それに集まってきたダンサーたちは個性と才能溢れる者ばかりでチャンスを掴むためならなんでもする、といった志の高い若者ばかりだった。
セルヴァとエマニュエルは参加者それぞれにインタビューを行い、彼らにとってダンスとは何かを聞くと皆目を輝かせて答えた。
まもしくしてダンスカンパニーは廃墟の校舎を使ってリハーサルを行った。それぞれのダンサーが自分の個性をいかんなく発揮し、リハーサルは大成功に終わった。リハーサルが終わると、彼らは引き続きその場所でパーティーをした。大音量で音楽をかけ、酒を飲みながらそれぞれが思い思いに踊った。
ところがやがてパーティー会場にいた者たちが次々体調を崩し始める。そしてみんなが飲んだ酒の中に薬が混入していたのではないかと思うようになった。
最初はお酒を作ったエマニュエルが疑われたが、彼女自身も飲んでいたため、矛先はオマールに向いた。オマールは酒が飲めないため彼だけ飲んでいなかったからだ。オマールが否定しても一方的に責められるばかりだった。挙句の果てにオマールはみんなからもみくちゃにされたうえに建物から極寒の野外に出されてしまう。
オマールを外に放り投げた後もその場にいたダンサーたちはさらに暴力的になっていき、お互いを攻撃し始めるのだった。
CLIMAXクライマックスのキャスト
- ソフィア・ブテラ
- ローマン・ギレルミック
- ソウヘイラ・ヤケブ
- キディ・スマイル
- クロード・ガジャン・マウル
- ジゼル・パーマー
- テイラー・カッスル
CLIMAXクライマックスの感想と評価
読者のあかつさんのリクエストです。ありがとうございます。
「エンター・ザ・ボイド」や「LOVE 3D」で知られるギャスパー・ノエ監督による、演技未経験のダンサーたちを起用し、音楽とダンスとホラー映画を融合させたミュージカルサイコホラー。
パーティーで薬をやったことがきっかけで次々と暴力的かつ破滅的になっていく若者たちを描いた、 アイデア満載の斬新な音楽劇で企画自体は面白いです。踊りも格好いいし、音楽もいいし、ダンスの見せ方もうまいです。特に最初のリハーサルのダンスシーンはそれぞれのダンサーの体格、個性、動きの特徴が光っていて最高でした。
ただ、描写は大げさで、ホラーとして怖いかっていうとそんなに怖くは感じませんでした。いくらみんなが薬をやったからって酒を飲んでもそれぞれ反応が違うのと同じようにあれだけ大勢の人がいたら全員が同じ症状になるってなかなかないですよね。薬物接種後のリアクションという点においてはもっと多様性を出してもよかったかなと思いました。
そういう意味では薬の怖さを極端に分かりやすく描いたなあ、という印象です。なので子供たちに見せて教訓にするのはいいかもしれませんが、大人が映画として見たときにはいかにもお芝居といった物足りなさを抱くんじゃないでしょうか。
とにかくいろんなハプニングを起こしすぎなのもありますね。あちこちで暴力が繰り広げられているのに誰も逃げようとしなかったり、警察呼んだりしないのかよっていうのがちょっとね。人が流血してたり、燃えたりしてるのにみんな知らん顔って。
オープニングシーンがエンディングになっているのもすぐわかったし、いろいろとベタな部分も多かったです。インタビュー映像、噂話のシーンなんかはよくあるリアリティー路線のドラマっぽく、たわいのない話がずっと続いていくのも気になりました。
リハーサルからは終始ワンカット風に撮っていて、ノンストップで恐ろしいことが起こっているのを強調しているんだけど、視点が次々と変わっていくのが面倒だし、あのせいでキャラクターの特徴を掴む前に視点が切り替わってしまう難点もありました。最後も結局誰になにが起こったのかあいまいだったし、誰が生きてて、誰が死んだのかわかりにくかったです。
視点が変わって、わざわざカメラを向けた割には大したネタがないときもあったりと、別にワンカット演出は視聴者からすると不必要かなあ。
ストーリー性が薄く、リアリティーはあったりなかったりなので1時間半程度の尺なのに正直途中で飽きてしまいました。前半は結構いいんですけどね。全体的に企画ありき、アイデア重視の作品でしたね。
コメント
リクエストにお応えいただきありがとうございます!
個人的にかなり好きな映画だったのですが、映画男さんにはそこまで刺さりませんでしたか…
自分は逆に前半のインタビューやダンスシーンでハマりきれなかったものの、後半で一気に引き込まれました
あの激しい視点の切り替わりから特異な出来事が次々に起こっていく感じがお化け屋敷のようでかなりハラハラしたのですが、言われてみると確かに誰が何してるのかわかりにくいですね
リクエストありがとうございました。あの異様な世界に引き込まれるかどうかがこの映画のカギですね。
ある意味「出オチ」みたいな作品。
私的にはなかなかの怖さはあって、時間も短いのはよかったです。
ただ、薬が効いてくる前半の下ネタトークのところはほぼ寝てました。
終盤は何が起こってるのか逆さま映像やらピカピカ映像の不気味な映像による恐怖煽りが単純に見にくくて、恐怖が半減してしまったところもありました。
1番嫌だったのが子供の泣き叫ぶ声でしたー。
ストーリー、犯人、動機なんてものは重要じゃなく、実際の事件にインスパイアされた監督がこの映像を撮りたかった。それに尽きるんじゃないかと思いました。