劇場はひも男と尽くす女の依存恋愛劇!感想と評価

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男はどこにでもいそうなのに対し、女はファンタジーの設定の下に成り立っている恋愛劇。賛否両論ありそうな内容ですが、僕はそこそこ楽しめました。53点

映画劇場のあらすじ

一番会いたい人に会いに行く…山崎賢人『劇場』本予告

売れない劇団の脚本家と演出家をしている永田は街中で自分と似た靴を履いた沙希と出会う。永田は沙希を喫茶店に誘いたかったが、お金がなく、結局飲み物を彼女からご馳走になる始末だった。

終始挙動不審な永田を沙希は変に思うことなく、むしろ面白がってくれた。二人はたちまち距離を縮め、やがて永田は沙希の家に転がり込むようになる。

永田は才能のない自分に強いコンプレックスを覚え、度々沙希に当たった。そんな彼に沙希は甘かった。

ほとんど働きもせず、屁理屈ばかりこねている永田を沙希はいつも許し、守ってあげた。永田の才能を信じて、自分はバイトを掛け持ちしながら生活を支えた。しかしそんな二人の関係もやがてバランスが崩れていくのだった。

映画劇場のキャスト

  • 山﨑賢人
  • 松岡茉優
  • 寛 一 郎
  • 伊藤沙莉
  • 井口理
  • 浅香航大

映画劇場の感想と評価

「世界の中心で愛を叫ぶ」、「ジムノペディに乱れる」、「リバーズエッジ」などを撮った行定勲監督による純愛ドラマ。又吉直樹の同名小説の映画化です。

劇団にのめり込んでいく、さえない脚本家の男と、彼を献身的に支える女の関係性をつづったラブストーリーで二人の心理描写を中心に話が進んでいく文学的な作品です。

火花」でもそうでしたが、又吉直樹らしい理屈っぽさや哲学っぽさが出ていて、言葉のチョイスが上手いです。

リアリティーはあったり、なかったりで面白い箇所とそうでない箇所が混在し、評価するのに難しいタイプの映画ですね。

おそらく主人公のダメ男、永田をどう捉えるかによって評価が分かれるんじゃないでしょうか。

永田は恋人の沙希の家に転がり込み、家賃はもちろん、光熱費さえも払わないようなひも男。なおかつプライドだけは一丁前で、気に入らないことがあると偉そうに喚き散らすことしかできないクズです。そんな彼に強い嫌悪感を抱いてしまったらこの映画はアウトでしょうね。

一方の沙希はなぜか永田を尊敬し、愛おしく思い、生活の面倒を見てあげるだけでなく、永田がほかの女と遊んでいても見て見ぬふりを決め込み、常に笑顔で接し、前向きな言葉をかけてあげるようなタイプの女です。

早い話が都合のいい女で、そんな沙希に永田は依存し、沙希もまた自分を頼る永田に依存しているのでした。

沙希のキャラクターは完全なる男目線の理想の女性像を押し付けているような気配があって、ファンタジーに近いですね。

浮気は許すわ、男が理不尽なことでキレだしても、温かい言葉で包み込んであげるわ、天然ボケみたいな可愛さはあるわ、いかにも日本人の男に受けそうな女性にしてあります。

しかし沙希のような女が存在しないかといったら、いそうな感じもするのがまた絶妙で、ファンタジーの中にもやはり現実味があるんですよね。その考えこそが男の一方的な妄想なのかもしれないけど。

ただ、女性から言わせたらふざけんなって思うんじゃないかなぁ。なにをしても許してあげると思うなよって普通の人ならキレてるシーンが多々あるはずです。

永田はどうしもないクズですが、いかんせん彼を演じる山﨑賢人がイケメンなので、女性視聴者の中には許しちゃうタイプも少なくなさそうです。そしてそれがこの映画の評価を余計に難しくする要素にもなっていますよね。クズだけど、ずっと見ていられちゃうっていうね。

物足りないなあ、と思ったのは男女の腐れ縁、あるいは依存関係を描いている割にはセックス描写が全くないことですね。二人の関係を描くうえでセックスがないのが逆に不自然で、ベッドの上では沙希が我儘だったりしたら面白かったんですけどね。自分だけイッたらすぐ寝ちゃうとか。

そういう意味ではギャップや意外性のないストーリーだし、クズはクズのまま、優しい女は優しいまま終わっていったなぁ、という印象です。

不自然なのは、二人の出会い方と、永田の髪型ですかね。僕と同じ靴履いてますよねって言うナンパの仕方でついて行かないでしょ。それもナンパしたのにお金ないんですとか、一番嫌われるタイプじゃないですか。

永田の髪型に関してはいつもボサボサの寝ぐせ風にしているのがわざとらしくてダメでした。スプレーで寝ぐせを演出してる感が半端なく、ヘアスタイリストが下手なのか、演出が下手なのかどっちなんでしょうね。

服装にしても貧乏の設定なのに、いつもオシャレないい服を着てるし、ヨレヨレくしゃくしゃのシャツがまた嘘っぽいんですよ。本当に貧乏な奴の格好じゃないもん。みすぼらしさを出すよりも格好良さを出すことに力を入れてるからああなるんだよね。

ラストシーンは悲劇を期待していたんだけど、とことん感動狙いでしたね。舞台のシーンは「火花」と被るし、ちょっと残念でした。

一方でなかなかいいシーンもありました。自転車に乗って桜を見に行く下りは、朝方だったために桜が薄暗く映っていて、色鮮やかで美しいはずの桜がどこかモノトーンで、もの悲しくなっていたのが良かったです。桜をああいう使い方するのは斬新だなぁ。

大雨の中、ずぶぬれになりながら走るところとか寒いシーンも多々あるんだけど、鑑賞後には無性に恋人に会いに行くたくなるような、他人が愛おしくなるような気持ちにさせるものがありますね。それだけで恋愛ドラマとして十分に役割を果たしているといえるんじゃないでしょうか。

コメント

  1. きのこ食べすぎ より:

    何か男女関係の物語というよりも、「愛情」という名の檻で息子を閉じ込めて支配しようとする毒母みたいな印象を受けました。
    実際、この手の女性はいますよね。歪んだ母性で「ダメ男(←ここ重要)を温かく包み込んで、ドロドロに溶かしてスポイルさせるウツボカズラみたいなタイプが。
    ビートたけしが売れない芸人時代にこの手の女性(ストリッパー)と同棲していたそうで、自分が売れない事を責めないし小遣いもくれてメチャクチャ居心地が良い女だったんだけど、ある日『コイツと一緒にいたら俺は絶対にダメになる』という恐怖感を感じて、強引に捨てて逃げたそうで。
    自分の決断は正しかったと確信している反面、その女性に対しては未だに罪悪感を感じているとか言っていました。
    何かストーリー的には、たけしの実話みたいなオチにした方がカタルシスあったんじゃないかと。

  2. 映画好き より:

    原作が好きで、単行本も文庫本も持ってます。もう五回以上は、読んでます。映画は、まだ、見てません。ネタバレになるから、映画男さんの記事を読まずにおこうかと思いましたが、読んでしまいました。(笑)
    映画男さんの記事を読む限り、おおむね原作通りかな、と思い胸を撫で下ろしています。
    好きなことだけして、女に食わせて貰う、って一見して、羨ましそうですが、意外と退屈かもしれませんね。原作では、時間潰しにゲージを興じるシーンがありました。本当に時間潰している様で、読んでいる方も、イライラしながら、読みました。(笑)
    確かに、セックスはおろか、キスする場面すらなかったですね。
    その辺りがリアリティーないような、あるような、不思議な感覚でした。勿論、描かないだけで、二人はそう言う関係なのは、分かりますが、一文字も入れずにいたのは、何か狙いがあったのかも、知れませんね。
    とりあえず、映画も観てみます。
    ありがとう。映画男さん。

    • 映画男映画男 より:

      ひもはひもで大変そうでした。あんな暮らし絶対きついと思いますけどね。ぜひ見てみてください。