自由を求めて刑務所から脱出する、という単純明快で面白い逃亡劇。生死を賭けた男たちの執念が伝わってきました。67点
プリズン・エスケープ脱出への10の鍵のあらすじ
1978年、南アフリカではアパルトヘイトによって多くの黒人が差別や迫害を受けていた。そんな中、政治活動家のティム・ジェンキンとスティーヴン・リーは爆弾を使って、アパルトヘイト撤廃を訴えるビラをあちこちでばら撒いた。
しかし二人はそれによって逮捕され、裁判では重罪とみなされた。ティム・ジェンキンには12年、スティーヴン・リーには8年の実刑が言い渡され、白人の囚人を管理するプレトリア中央刑務所に送られた。
ティム・ジェンキンとスティーヴン・リーは入所した当初から刑を全うする気はさらさらなかった。どうにかしてそこから脱出してやろうと思っていた。
二人は刑務所内でフランス人のレオナードと親しくなり、鍵を木材で自作し、脱獄する計画を企てる。
プリズン・エスケープ脱出への10の鍵のキャスト
- ダニエル・ラドクリフ
- ダニエル・ウェバー
- イアン・ハート
- マーク・レナード・ウィンター
- ネイサン・ペイジ
プリズン・エスケープ脱出への10の鍵の感想と評価
フランシス・アナン監督による、アパルトヘイト下にあった南アフリカを舞台に刑務所に入れられた二人の活動家が脱獄するまでを描いた衝撃の実話。
ティム・ジェンキン本人によるノンフィクション「Inside Out: Escape from Pretoria Prison」の映画化です。
ちなみにこの人がティム・ジェンキン。
ユーチューブチャンネルまで持っていて、詳しくどうやって逃げたのか解説してるのが笑えます。
「ショーシャンクの空に」や「ミッドナイトエクスプレス」といった脱獄ものが好きな人にはおすすめできる一本で、最初から最後までドキドキが止まらない演出になっています。
冒頭の10分で刑務所行きが決まり、残りの1時間半全てが脱獄にまつわるエピソードになっていて政治色は極力排除されています。そのため特にアパルトヘイトや南アフリカについて知識がなくても十分に楽しめる内容になっていました。
頭を使わない映画ですが、その代わり体力を使います。主人公目線に立ってしまうと、緊張しっぱなしになって物語が終わる頃にはヘトヘトになります。
ほかの脱獄ストーリーと違うのは、ダニエル・ラドクリフ扮する主人公のティム・ジェンキンが自ら刑務所の扉を開ける鍵を作り、ドアから脱出するという点でしょう。よくあるトンネルを掘るとか、ドアを外して隙間から出るとかじゃないんですよね。
いわば命がけのDIYで、手先の器用なティム・ジェンキンだからこそ実現した計画といえそうです。
当時のプレトリア中央刑務所のドアは古い鉄格子のものばかりで鍵も単純な作りだったようで、ティム・ジェンキンは何度も何度も看守がぶら下げていた鍵を観察して頭の中で記憶し、設計図を書き、端材を利用して木の鍵を作成しました。その数なんと10本以上。
まさに執念の作業の連続で、当然看守の目を盗みながら慎重に鍵を作り、そして鍵を至るところに隠しながら計画を実行に移していったわけです。
もちろん何度も疑われ、バレそうになります。木の鍵だから回している最中に折れたりするし、鍵を地面に落としてしまうミスも一度ではありませんでした。看守もまさか鍵を木で自作する奴がいるなんて想像もしないでしょうね。
脱獄する囚人の想像力って通常の人のそれを遥かに超えていて、不可能だと思われることを軽々越えていく様子は痛快ですらあります。
そういえば日本にもかつて何度も脱獄を果たした囚人、白鳥由栄がいましたね。彼の場合は身体能力がそもそもずば抜けていて関節を自由に外すことができたり、手錠の鎖を引きちぎったり、といった怪力だったそうです。白鳥由栄の話もすごいので興味がある人はぜひ調べてみてください。
間違いなくこの映画の最大の見所は、看守に見つかりそうになる度に登場人物たちが奇跡的に難を逃れる様子でしょう。
彼らに危険が迫るのは脱獄する日だけではなく準備のときからです。実際に脱獄を実行に移すまで準備に実に400日以上も費やしたというのだから驚きですよね。
それもかなり用意周到で刑務所をただ出るだけでなく、その後の逃亡計画も綿密に立てていたようです。さすがだわ。
ラストは実話ドラマでお馴染みの本人の写真が登場して終わりますが、それを見ながら「いるんだねぇ、本当に脱獄するクレイジーな奴が」と変に感心しちゃいました。
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