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夕陽のあとはテーマがいいし面白い!感想とネタバレ

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この記事は 約5 分で読めます。

美しい田舎景色と、感情を揺さぶられるストーリーが合わさった良作。つらく、悲しいシーンも多く、思わずグッときました。72点

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夕陽のあとのあらすじ

漁業が盛んな田舎町、鹿児島県長島町で五月は夫の優一と共に養殖業を営んでいた。二人には里子の7歳の息子、豊和がおり、特別養子縁組の申請を控えていた。

それが無事に済めば晴れて豊和は、法律上二人の子供となる。ところがそんな時、二人の前に豊和の生みの親の茜が現れ、養子縁組の話が中断してしまう。

五月は今まで豊和を育てたのは自分だとして豊和を譲る気はさらさらなかった。茜も豊和を生んだのは自分だといって一歩も引かない。しかし法律上は生みの親の茜が有利なのは明らかだった。

肝心の豊和は自分が里子であることは知らなかった。彼は自分の身に起きたことも知らず、二人の女性の間で板挟みになる。

夕陽のあとのキャスト

  • 貫地谷しほり
  • 山田真歩
  • 松原豊和
  • 永井大
  • 川口覚
  • 木内みどり

夕陽のあとの感想と評価

「アレノ」の越川道夫監督による鹿児島を舞台にした家族ドラマ。

7歳の少年の親権をめぐって里親と生みの親の女性二人が感情むき出しで争う姿を描いた女の戦いです。

愛情か、それとも執着か。一人の子どもに対する女性たちの様々な思いやエゴが交差し、醜い争いから始まり最後は心温まるエンディングで締めくくる、見ごたえたっぷりの内容になっていました。

キャストはヒロインの貫地谷しほりと山田真歩二人の演技が素晴らしいのに対し、危なっかしい素人演技を見せる人たちも結構います。

それでもテーマがしっかりしているし、見せ場を作っている二人の女優がいい仕事をしているおかげで総合的に質の高い映画になっています。特に子供を思う母親のやるせない気持ちを映したシーンの数々は涙を誘います。

この映画、実は地域おこしのプロジェクトのために実現した作品なんですね。クラウドファンディングで製作費を募り、寄付金はふるさと納税の対象にした、というまさに寄付側も製作側もウィンウィンな企画といえるんじゃないでしょうか。

素人演技をしている人がいるのは、実際に地元の人たちをエキストラに迎えているからなんですね。

地域おこしプロジェクトだからといって適当に作ったんじゃなく、真剣に製作したのが伺えるし、その結果、しっかり地元をアピールできたんじゃないでしょうか。

それぐらい長島町の魅力を十分に映像を通じて伝えているし、太鼓や漁業といった地元に根付いたものをストーリーの中に上手く取り入れています。

また、テーマに不妊治療や養子縁組を選んでいるのも絶妙ですね。日本では子供が欲しくて不妊治療をしている人がたくさんいる割には養子を迎える、っていう発想はまだまだ一般的じゃないですもんね。

経済的余裕があって、子供が欲しくてもできない夫婦はじゃんじゃん養子を取って、親のいない子供たちを救ってあげればいいのにって思うけど、なかなか現実的には日本社会では難しいんですかね。

経緯は違いますが、子どもが育ての親と生きるべきか、生みの親と生きるべきか、という論点においては「そして父になる」を彷彿させるところがあります。

この映画の場合、子供の豊和が二人の家族の間で取り合いになる原因は実の母親の茜が一度親権を失い、五月と優一夫婦が里親になったにも関わらず、また特別養子縁組が決まる直前になって親権を主張してきたからです。

夫婦は豊和を赤ん坊のときから育ててきただけに今になって引き離されるなんてことは考えられません。

一方、茜も自分には豊和しか生きがいがない。なにより血のつながりある。過去にはいろいろあったけど、ずっともう一度母親になるために努力してきた、と言い張ります。

どちらの主張ももっともに聞こえるし、それゆえにどちらの視点で物語を見るのか人によっても分かれそうです。

あと、子供の年齢がまだまだ小さくて可愛い年頃の7歳っていうのもポイントですよね。あれが生意気盛りの16歳とかだったら、多分あんなにドラマチックにならなかっただろうし、息子本人が「一緒に住むなら金持ってるほうがいい」とか言い出すかもしれないしね。

日本映画っぽいなあと思うのは、あくまでも二人が感情論で直接対決するストーリーになっているところです。

それも生みの親も育ての親も息子に本当のことを打ち明けて彼の意見を聞くわけでもなく、自分たちが息子といたい、ということばかり考えているのが自分勝手でもあるし、決して美しいとはいえないでしょう。だけどリアルでした。

双方が揉める中、お祖母ちゃんが言っていた言葉が印象的だったです。

「子供は預かりものなんだよ」

たとえ血のつながっている自分の子供だとしても自立してしまえば離れていく。一緒にいられる時間は限られている。だから預かりもの。

そんな存在を自分のところにいつまでも置いておきたいというのは親のエゴでしかないんですよね。

そういう意味では二人の母親はどこか息子の豊和のことをどこか所有物のように考えているふしまでありましたね。「わたしのもの」みたいな。

これがもしアメリカ映画だったら、当人同士の話し合いなど起こりようがなく、弁護士同士か裁判所が決めることに従うのみという法定バトルになっているんじゃないでしょうか。

おそらく実際は日本でもあんな当人同士がもみくちゃになって争ったりしないでしょうね。あんな難しい問題は法律で裁くしかないでしょ。あるいは田舎町ならもっと村民からの組織的な執拗な嫌がらせ行為とかありそうなもんですけどね。

そういう意味では、あなたのほうが私より母親に相応しいわよ的な甘っちょろい結末はちょっとリアリティーを感じなかったかなぁ。

これ、もしスリラーとかホラーにしてたら本当に怖い話になってたと思いますよ。それこそラストのボートのシーンはどちらかが相手を海に落とすっていうバッドエンディングでも良かったですよね。もしかしたら断られたら落とす気だったんでしょうか。もしそうなってたら誰もが予想を裏切られる名作になってかもしれないです。

まあ、そんなことしたら地域おこしにはならないだろうけどね。怖がって誰も行きたがらないから。

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