【動画】ディア・ドクターは深くて面白い!感想とネタバレ

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医療不足問題から権威主義、はたまた人間の哲学や宗教的な部分にまで切り込んでいるかのような面白い物語。テーマがしっかりしていて、見る者に疑問を投げかけるストーリーがいいです。72点(100点満点)

ディア・ドクターのあらすじ

人口1500人余りの小さな村で診療所を営む伊野治は、看護師の大竹朱美と村にやってきたばかりの研修医相馬啓介と三人で、村民たちを献身的に見て回っていた。

昼夜問わず、患者がいるところに飛び回る伊野治のことを村民たちはまるで神のように拝んでいる。

しかし伊野治には秘密があった。というのも彼には医師の資格がなく、闇医者としてずっと村民たちを治療してきたのだった。

そんなある日、瀬戸際に追い込まれた伊野治は村を逃げ出し、警察沙汰になる。刑事が村民たちに事情を聞いて回ると、誰からも慕われていた伊野治の人物像が浮かんできては、何が正義か分からなくなっていく。

ディア・ドクターのキャスト

  • 笑福亭鶴瓶
  • 瑛太
  • 余貴美子
  • 松重豊
  • 岩松了
  • 笹野高史
  • 井川遥
  • 香川照之
  • 八千草薫

ディア・ドクターの感想と評価

蛇イチゴ」、「ゆれる」、「永い言い訳」、「夢売るふたり」などでお馴染みの西川美和監督による働き者の偽医者を主人公にした人間ドラマ。

医師のいない村に医師免許を持っていない男がやって来ては、独学で学んだ知識で寝る間も惜しんで村の人々をケアしていく話で、経歴を偽って”人助け”をする主人公を通じて正義とはなにか、道徳とはなにか、嘘とは何か、を問いただす人間味溢れる物語です。

違法な営業を医療行為をしてきた主人公は果たして天使か、それともただの詐欺師か。これは見る人の考え方によってかなり左右されるんじゃないでしょうか。

権威に弱い人にとっては、資格をお持ちのお医者様は神様のような存在なのに対し、伊野治の人間性に惚れて、一人の人間として信頼を寄せている人にとってはもはや資格の有無は意味を持たないかもしれません。

多くの村民は前者でしたね。ああいうタイプは、ただ誰かに頼りたいだけみたいなところがあるので、ちょっとした専門家が現れると、すぐに先生、先生ともてはやす一方で、盲目的に他人に期待し、信用するので何か失態が見つかると、手のひら返しをするのも特徴です。

逆に伊野治の自己犠牲を現場で見てきた仲間たちや個人的に面倒を見てもらっていた未亡人の女性などは刑事から犯罪者として扱われている伊野治に対して複雑な気持ちになっていた様子です。

果たして免許は持っているけど患者を人間とも見てない医者と、無免許で一人一人に真剣に向き合って相談に乗ってくれる偽医者と、どっちがありがたい存在なのでしょうね。

暴論になるのを承知でいえば、僕的には、結果的に治ればどっちでもいいかな。医療に絶対はないし、どこか宗教みたいな要素があって、要するに助言や治療法を信じるか信じないかの全ては各自が判断するしかないと思っています。

極端なことをいうと、薬だろうと、断食だろうと、催眠術だろうと、おはらいだろうと、効けばいいんですよ。でも資格がないと絶対ダメとか言い出したら、文明が発達していない民族の村のシャーマンとか全員逮捕しないといけなくなるよね。

老人で溢れる田舎社会では、偽物の医者によって健康や心の秩序が保てていた、というのは、黒魔術とか祈祷師とか長老とかが小さなコミュニティーをまとめてるレベルとそう遠い話でもないし、不安や病を抱える人間の心理を象徴しているようで興味深いですね。

また、村全体が嘘を信じ、共有することで嘘が嘘ではなくなる現象もあるあるで、みんな自分の都合のいいようにしか物事を解釈しないのが笑えます。

そんな中で伊野治だけを祭り上げ、やがてまた袋叩きにするのは正しいのかどうかっていう話にもなってきて、なかなか深いですね。

ラストは西川美和監督の得意とする、ほんわか曖昧エンディングになっていて、拡大解釈して悦に入る人も少なくなさそうです。

伊野治は捕まったのか、逃げれたのか。未亡人を看取るつもりなのか、それとも、、、、といったようにどうにでも考えられそうですね。

主役を演じた笑福亭鶴瓶は文句なしのはまり役だったんじゃないでしょうか。瑛太、
余貴美子、松重豊、香川照之も自然だったし、それぞれが恥ずかしくない演技をしていますよね。

ラストの主題歌もいい味出してますね。

映画『ディア・ドクター』エンディング曲「笑う花」/モアリズム PV

僕にとっては、この作品が西川美和監督の最高傑作です。もうちょっと短くしてくれたらよかったのにとか、研修医の相馬啓介が若い患者の一人や二人に手を出したり、井川遥扮する女医が白衣を脱いでくれたらもっと興奮しそうなものですが、色々文句のつけどころはあっても、全体的にはとても完成度の高い作品だと思います。

果たして今後これを超える作品を西川美和監督は作れるのでしょうか。この映画が公開されたのが2009年。そのときからずっとそのときを密かに待ってます。どうかなぁ。無理かなぁ。

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