2017/04/10

怒り

前半はスローな展開が続くものの、後半から緊張感とワクワクが増していく、犯人探しサスペンス群像劇。キャストの演技が素晴らしく、ストーリー構成が見事でした。72点(100点満点)

あらすじ

八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。

シネマトゥデイより

映画怒りは小説と実際の事件がモチーフ

悪人」の李相日(りそうじつ)監督によるサスペンスドラマです。同名の小説が基になっていて、市橋達也が犯したリンゼイ・ホーカーさん殺害事件をはじめ、日本で実際に起こった様々な出来事を題材にしています。

物語は、3人の容疑者を軸に進んでいきます。八王子で起きた夫婦殺人事件の犯人は山神一也。彼は全国に指名手配され、身元も顔も公開されています。

しかし逃亡中に整形手術をしたうえ、女装している可能性もあるといった情報が流れ、現在の姿は指名手配写真のそれとは大分違っている可能性が高く、彼の身体的の特徴が3人の容疑者にそれぞれ当てはまります。

港町に流れ着いてきた田代哲也(松山ケンイチ)、新宿二丁目で恋人と出会ったゲイの大西直人(綾野剛)、沖縄を放浪しているバックパッカー田中信吾(森山未來)、いずれも素性不詳の者ばかりで、周囲の人々は彼らを知れば知るほど疑いを抱いていく、といったストーリーになっています。

前半はスローは立ち上がりで物語がどの方向に向かっていくのかが見えません。サスペンス劇であることすら忘れてしまうほど、事件ではなく、容疑者たちの人物描写だけに時間が割かれます。

そのせいか序盤は少しじれったさもあるし、退屈な時間帯もありますが、そこを我慢すると後半から徐々にエキサイティングな展開になっていきます。誰が犯人なのか最後まで全く読めないからです。

上手いなあと思ったのは、3人の顔の特徴を合成させて犯人の顔写真を作っている点です。誰の顔にも似ているので、劇中に登場する数々の伏線の罠に騙されます。あの編集、撮影方法、ストーリー構成は素晴らしかったです。

映画怒りは佐久本宝、広瀬すずの演技がいい

キャストはイケイケのトレンド俳優たちばかりです。渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、池脇千鶴、妻夫木聡、綾野剛、森山未來、広瀬すず等々。

中でも無名の沖縄出身の新人俳優佐久本宝と広瀬すずの演技は良かったです。佐久本宝は素朴な雰囲気を持ち、演技がとても自然で、ビジュアル重視の日本映画界には珍しい存在ですね。よく監督もあのメンバーの中で彼を抜擢したなあ、という感じがします。他のどのキャストよりも演技が一番上手かったです。

一方の広瀬すずは存在感があって、日に日にフォトジェニックな顔になってきてますね。安定感もあったし、なによりレイプシーンの演技はなかなかリアルでした。18歳にしてあの役、あのシーンをよくこなしたなあ、と感心してしまいました。

他のキャストも普通にいい演技しています。宮崎あおいのパフォーマンスにも驚きました。いい作品、いい監督に当ればちゃんといい仕事ができるんですね。

ゲイのカップルを演じた妻夫木聡と綾野剛の役作りも話題になりましたね。なんでも二人はこの役のためにホテルで同棲までしたそうです。一緒にご飯を食べて、お風呂にも入って、同じベッドで寝るという行為を何週間か続けたとTV番組で語っていましたね。

そこまでする必要があるのかどうかは分かりませんが、TV番組でそういうことをペラペラ喋ってるところを見ると、綾野剛は役作りのために努力している自分に酔っている感がありますね。別に役作りなんかしなくても本番でゲイっぽかったらそれでいいんですよ。

正直綾野剛はそんなにゲイっぽくなかったし、ほかのキャストの演技と比べても劣っていました。むしろあの役は綾野剛じゃなくて成宮寛貴がやるべきだったでしょう。あるいはおすぎかピーコでも面白かったかもしれません。

映画怒りのネタバレ、犯人は誰?

物語の中でたくさんのヒントが出てきますが、リンゼイ・ホーカーさん殺害事件で市橋達也がどのような逃亡生活を送っていたかを知っている人は犯人がピンと来るでしょう。

僕が一番ひっかかったのは犯人が自分の名前を名乗ったときに少し躊躇した下りです。また、別のシーンでは自分の名前を呼ばれているのにも関わらず、振り向かなかったのもヒントになりますね。すごく微妙なシーンだったけど、ああいう細かい演出が好きです。

しょうもない映画なら犯人の名前もここでばらしているところですが、面白い映画なので後は自分で見てください。それにしても久しぶりに見ごたえのあるサスペンスを見させてもらいました。大満足です。

>>「怒り」はU-NEXTで視聴できます。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう