わたしは、ダニエル・ブレイク(原題 I, DANIEL BLAKE)

理不尽な社会保障システムに振り回される初老の男性とシングルマザーによる英国映画。悲しくて、やるせない現実的なストーリーです。73点(100点満点)

あらすじ

59歳のダニエル(デイヴ・ジョーンズ)は、イギリス・ニューカッスルで大工の仕事に就いていたが、心臓の病でドクターストップがかかる。失職した彼は国の援助の手続きを進めようとするが、あまりにもややこしい制度を前に途方に暮れる。そんな中、ダニエルは二人の子供を持つシングルマザーのケイティと出会う。

シネマトゥデイより


文句

娯楽性は低く、派手さや華やかはないものの、しっかりとしたストーリーとリアルな俳優たちに支えられた上質の人間ドラマです。

いかにもイギリス風といった感じの皮肉が込められた悲劇で、イギリス映画好きにはかなりおすすめです。

物語の主人公は、愛する妻を亡くした初老のダニエル。彼は心臓病を患い、働くことができない健康状態にあります。

独り身のため当然それでは生活できるはずもなく、仕方なく生活保護を受けようとしますが、今の病状では規定に達していないと言われ、生活保護が降りません。

それならそうと失業手当を受けようとしますが、失業手当を受けるには仕事を探していて見つからないことを証明しなければなりません。

それにはネットから申請書を提出したり、オンラインで求人に申し込まないといけないといったルールがあり、パソコンに疎いダニエルはそれらのことが一切できず、働けないと分かっていながら自分の足で職探しを行い、手当たり次第履歴書を配っていきます。

そんなある日、ダニエルは役所で同じように理不尽な扱いを受け、職員と喧嘩になっていたケイティと出会い、彼女と二人の子供たちとすぐに打ち解けていきます。

ケイティはシングルマザーで食べる物にも困っているほどの経済状況にあり、見かねたダニエルはケイティの家の修理を手伝ってあげることに。それをきっかけに二人は家族のようになり、お互いのことを助け合って行く、というのがあらすじです。

文句をつけるとすれば、ダニエルを演じた俳優デイヴ・ジョーンズが59歳にしては老けすぎだ、ということぐらいでしょうか。僕は彼のことをずっとお爺ちゃんを見る眼差しで見てしまいました。

確かに海外にはいますけどね、50代ぐらいでお爺ちゃんみたいな人。でもさすがに彼は老けすぎじゃないかなあ。

彼を60代の設定にしなかったのは、失業保険どころか年金問題に話が飛び火してしまって、話がややこしくなるからでしょう。

ただでさえものすごく理不尽な話で、これを見ていると、もともと公務員嫌いの人は、彼らに対する怒りが倍増してしまうかもしれません。今すぐ市役所に乗り込んで、あることないことクレームを付けたくなるかもしれません。

ただし、問題は役所の職員にあるのではなく、社会保障が必要な人にしっかり行き届いていないシステムそのものにありそうです。

そのせいで市民は自分の権利を受けるために、あそこちをたらい回しにされ、無駄な手続きに時間を費やすはめになる、というのはなにもイギリスに限ったことじゃないでしょう。

働けるのに失業手当をもらっている若者がいる一方で、働きたくても病気がそれを許してくれず、なんの保障も受けられない人がいるのが、なんとも皮肉な話で、それに加えてガチガチの官僚主義に染まった職員たちの冷たさと人間味のなさにも、余計に気が滅入ってきます。

それでもときどき登場する心優しい人たちがこの物語の救いです。主人公ダニエルとケイティの友情は安らぎを、可愛い子供たちは希望すら与えてくれます。

全体的にはしかし絶望の割合のほうが大きく、容赦ない厳しい現実のエピソードが続きます。ラストも決してハッピーエンドとは言えない終わり方をですね。

それなのに見てよかったなあと思える作品だし、人にもすすめたくなる映画です。あれでダニエルがただの頑固おやじで、嫌な奴だったらまた話は変わっていたんでしょうが、なんせ憎めない根のいい男だったから惹かれたのかもしれません。

シングルマザーの人が見たら、きっとケイティの状況に同情して涙を流してしまうでしょう。優しい人間ほど損をする。そんな世の中を上手く描いていました。

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