2017/11/23

【海外ドラマ】殺人者への道(原題Making a Murderer)

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おそらくこれを超えるミステリー&裁判ものは作れないんじゃないか、というほどの完成度の高い実録犯罪ドキュメンタリードラマ。見ていると悲しくなって、やるせなくて、ムシャクシャしてくる、感情を大きく揺さぶられるシリーズ。85点(100点満点)


あらすじ

ウィスコンシン州の田舎町に住むスティーブン・エイブリーはある日、やってもいないレイプ事件の罪を着せられ、刑務所に服役する。彼の疑いが晴れたのは18年後、それまでなかったDNA分析が捜査に採用されたことで、無罪が証明された。ところが自由を満喫しようと人生の再出発を切ったばかりの彼はあろうことか再び殺人事件の容疑者に挙げられてしまう。それも今度はスティーブン・エイブリーだけでなく16歳の甥っ子まで共犯者として逮捕され、地元メディアはトップニュースとして連日事件を報道することに。果たして事件の真相とは?

文句

いやあ、こんな気味の悪い事件が実際に起こったなんて信じられないですね。あまりにも話に引き込まれたので、エピソード10まで一気に鑑賞してしまいました。警察の尋問、公判など、普段見ることのできないような映像が残っているので、それを全て見るにはものすごいエネルギーを使いました。全部見たらヘトヘトになります。

ポイントは舞台がアメリカのウィスコンシン州の人口わずか8万人ほどのマニトワック郡で起こったということです。アメリカにおいても文化や姿は違えど日本の村社会のような閉鎖感があることには変わりなく、その地域でスティーブン・エイブリーは若いころからある意味落ちこぼれとして育ちました。

18歳のときにはバーに不法侵入し、10か月服役。20歳のときには猫を殺し起訴され、23歳のときには従妹を銃で脅して逮捕されるなど、地元においては住人たちからも警察当局からもどうしようもない不良、あるいは危険人物としてマークされていました。村社会でそんなことをしていれば当然何か起これば彼がやったんではないか、といった根拠のない疑いを持つ人が現れます。

そしてマニトワック郡に住む女性がレイプ事件の被害に遭うと、警察はついに十分な証拠もないままスティーブン・エイブリーを逮捕し、起訴してしまったのです。それから18年もの歳月をスティーブン・エイブリーは塀の中で過ごすことになります。DNAテストで無実が晴れると、彼は真っ先に失われた時間を取り戻そうと、マニトワック郡当局や捜査責任者たちに対して3500万ドルの慰謝料を求めて裁判を起こします。

彼の冤罪が判明し、裁判を起こされると、地元警察にとっては自分たちの不祥事が暴露され、アメリカ全土に伝わることになります。無実の人間に18年もの苦痛を与えた冤罪事件を紐ほどいていくと、警察、検察、判事の腐敗ぶりが明らかになり、関係者は面子をつぶされることになったのです。

このことをずっと根に持っていた警察、検察、そしてFBIは2005年10月31日、一人の女性が行方不明になると、水面下で協力し合って迷わずスティーブン・エイブリーを容疑者として逮捕します。スティーブン・エイブリーの家を何日も閉鎖し、大規模な捜査を敢行すると、捜査が数日過ぎても何も見つからなかった家の敷地から次々と物的証拠が現れる、という奇妙なことが起こります。

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被害者の自動車が敷地の駐車場で、彼の血痕がついた自動車の鍵が部屋の床で、被害者の骨が庭の地面で発見されます。それでも証拠が不十分だと思った警察は、今度はスティーブン・エイブリーの16歳の甥っ子ブレンダンの高校を訪ね、そのまま警察署にまで連れて行き、尋問します。

引っ込み思案のブレンダンは警察に脅しをかけられると、早く家に帰りたいばかりにあることないことを話し始め、ついには自分がスティーブン・エイブリーと共謀して女性をレイプし、殺したと供述してしまいます。この供述が基になり、ブレンダンは逮捕され、彼まで裁判にかけられてしまうのでした。

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このドラマのすごいところは、ドキュメンタリーという形を取りつつ、完全にスティーブン・エイブリーとブレンダンは無実であり、これらの事件は冤罪事件だとして描いているところです。つまり警察、検察、判事、FBIをはっきりと批判しているのです。訴訟大国アメリカでこれだけ一方的に誰かを非難すれば、相手から訴えられる可能性は十分です。それによって大金を払うはめになるリスクもあるでしょう。

しかしそれでも撮らずにいられなかった、というのなら監督や製作者は自分たちが握っている情報に対して相当の自信と覚悟があったはずです。もしこのシリーズで描かれていることが事実だとしたら、悪魔のような権力者って本当にいるんですね。あれだけの訴訟大国で、これだけ司法が腐敗していたら、国民はどんな希望を持って生きていけばいいんでしょうか。

日本でも陪審員制度(裁判員制度)が採用されるようになりましたが、こういうケースを見ると、偏見ばりばりの素人たちが誰かを裁くってどうなのかなという気もしました。ただ、判事が裁こうが、陪審員が裁こうが、「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」としている「推定無罪」なんてという原則は実際は守られていないのが分かります。

犯人が誰だとか、事実がどうだとか、証拠がどうだとかはではなく、裁判が検察側と弁護側のただの勝ち負けのゲームになっている時点でやばいですよね。スティーブン・エイブリーを担当した弁護士が言っていた言葉が忘れられません。

「こんな司法システムの中で、もしあなたが誰かに起訴でもされたら、そのときはグッドラックとしか言うことができない」。

一方で同シリーズは無罪を主張していますが、その逆の主張をするシリーズが出てきても面白いですね。実際、ストーリーの中では作り手側に不利な証拠やエピソードは大分カットされていたそうです。たとえば被害者の車からはスティーブン・エイブリーの血痕だけでなく、彼の汗も見つかったそうです。血痕は警察が仕込んだ可能性があっても汗を仕込むことは困難だそうです。また、事件前、彼は被害者の女性に何度も電話をしていたこともわかっているそうです。

さらに驚きなのは同シリーズにも度々登場するスティーブン・エイブリーの元彼女がTV番組のインタビューで、このシリーズは嘘ばかりで、実はスティーブン・エイブリーから度々暴力を振るわれていたことを明らかにしたうえで、「彼は有罪だと思う」などと話していることです。

もしかしたらこのインタビュー自体もやらせという可能性もあります。元彼女が裏金をもらった可能性もぬぐえません。もうここまで来るとなにが本当で、何が嘘かはわかったもんじゃありません。

実はスティーブン・エイブリーも甥っ子も二人とも、あるいはどちかが実際に罪を犯したという可能性もあります。それはもう本人たちにしか分からないでしょう。有罪だとしたら一生刑務所にいておきなさいと言いたいところですが、もし無罪だったら一体彼らはどんなことを思って毎日を過ごしているのだろうか、と考えてしまいます。

>>殺人者への道はネットフリックスで視聴できます

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