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キューティー&ボクサーは最高!ネタバレと感想

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NY在住の日本人アーティスト篠原有司男と妻乃り子の関係性をアートを通じて描いたドキュメンタリーという名を借りた上質の恋愛ドラマ。強烈なキャラクターを持つ夫婦が繰り広げる日常がエネルギッシュで見る人にも元気を与える一本。78点(100点満点)

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キューティー&ボクサーのあらすじ

キャンバスをボクシングのグローブで殴るようにして絵を描くボクシングペインティングで注目を浴びた芸術家、ギュウチャンこと篠原有司男。1969年にアメリカへ渡った彼は、その3年後に美術の勉強にやって来た20歳以上も年下の乃り子と出会って恋に落ち、結婚する。学業を放棄したとして実家からの仕送りを止められる乃り子だったが、妻、アシスタント、母として有司男を支え、息子のアレックス・空海の育児に奔走。59歳となって息子も成長したことから、彼女は夫婦の道のりを題材にしたドローイングの創作に取り掛かる。

シネマトゥディより

キューティー&ボクサーの感想

監督のザカリー・ヘインザーリングはこれが監督デビュー作だそうです。5年間費やして撮ったそうですが、デビュー作でいきなりこの日本人カップルを題材に選び、世界中で高評価を受ける映画に仕上げるなんて天才ですね。

本来だったら日本人監督のだれかがこの二人のドキュメンタリーを撮って世界に紹介するぐらいじゃないといけないのに、外国人にそれを先越されてるところが情けない。AKB48のドキュメンタリー撮ってる場合かよっての。

この映画に出てくる篠原有司男さんと妻乃り子さんは生き方そのものがアーティストという感じがして面白かったです。

今月の家賃がない、電気代も払わないと止められちゃう、なんていうカツカツの生活の中で、展覧会を開いたり、コレクターに作品を売ったりして、なんとかやりくりしている姿がコミカルで、ピンチになっても今までも何度も切り抜けてきただろう二人の落ち着きようがいいです。

作品を買いたい、という人がいれば篠原有司男さんは自ら日本にまで出向き、売りにいきます。それも旅行カバンに結構な大きさの彫刻を無理やり詰めて、それを担ぎながら地下鉄で空港まで行くのです。

80歳のおじいちゃんがですよ。地下鉄を使うと50ドル浮くからさ、とか言いながら笑う姿は20代のバックパッカーみたいです。

住んでいる家もアトリエ兼自宅の倉庫みたいな殺風景な場所で、生活するスペースには無頓着で、しかし作品を作るスペースは十分な広さがあって、まるで映画のセットのような家でした。あの屋上のスペースとか恰好いいですね。NYであんな場所よく見つけたなぁという気がします。

そんな場所でアートで生活している二人の馴れ初めやこれまでの経緯を聞くだけでも十分に楽しいんですが、なにより妻の乃り子さんが30歳も年上の篠原有司男さんに一体どうしてこれまで連れ添ってきたのかが大変興味深ったです。

息子アレックスを出産後、旦那がアル中になり、生活していくために散々苦労したにもかかわらず、それでも別れずについてきた。自分をアシスタントや家政婦のように扱う旦那に文句を言いながらも、もし貧乏じゃなかったら私のことなんて捨てるんでしょ、と寂しそうに語る雰囲気は大和なでしこそのものでした。

きっと二人が生きてきた時代性もあるのでしょう。現代のカップルにはまずいなさそうなタイプです。また異国の地にいる日本人同士という状況が二人の絆を強めたというのもあると思います。

篠原有司男さんは言いました。「芸術はデーモン(悪魔)のようなもので、たとえ妻に出ていかれても、息子に家出されても、引きづり込まれていく」と。そうはいいつも、やはり乃り子さんがいなかったら芸術も続けられなかったような気がしますね。

夫婦揃って初めてなんとか成立する人生。そんな固い絆を久々に見せてもらった気がします。劇中、二人がとても自然な感じでキスするシーンがあります。80歳になっても人前で妻にキスする日本人の男なんてそういないですよ。すごいな、としか言えません。まさに理想のじじい像です。

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