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SHE SAIDシー・セッドその名を暴けは面白い!ネタバレ感想

この記事は 約5 分で読めます。

脚本、演技が素晴らしい、シリアスでマジな大人向け映画。#MeToo運動の発端となった記者たち、被害者たちの行動にはリスペクトしかないです。73点

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SHE SAIDシー・セッドその名を暴けのあらすじ

2017年、ニューヨークタイムズ紙の記者、ジョディは女優のローズ・マッゴーワンがハリウッドの著名プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインに性的暴行を受けたという情報をキャッチする。ローズ・マッゴーワンは最初こそ同件についてコメントすることを避けていたが、考えを改めジョディに自ら電話して彼女の体験を語った。

それを皮切りにジョディはアシュレイ・ジャッドやグウィネス・パルトローといった女優たちの証言を得ることに成功し、次々とハーヴェイ・ワインスタインと一緒に仕事をした女性たちの声を聞いていくことにする。しかし多くの女性たちはハーヴェイ・ワインスタインの報復を恐れて口を閉ざすのだった。

そこでジョディは同僚のミーガンをチームに入れて徹底的に被害者たちを当たることにする。それこそ世界中を回って被害者たちの家にまで会いに行った。記事を書いていることを聞きつけたハーヴェイ・ワインスタイン側から脅迫を何度も受けたがジョディとミーガンは一切ひるむことはなかった。

SHE SAIDシー・セッドその名を暴けのキャスト

  • キャリー・マリガン
  • ゾーイ・カザン
  • パトリシア・クラークソン
  • アンドレ・ブラウアー
  • ジェニファー・イーリー
  • サマンサ・モートン

SHE SAIDシー・セッドその名を暴けの感想と評価

アイム・ユア・マン恋人はアンドロイド」のマリア・シュラーダー監督による、#MeToo運動のきっかけとなった記事を記者が書きあげるまでの経緯をつづった社会派告発ドラマ。ジャーナリズムの力を発揮して権力に立ち向かう記者、そしてなにより性被害者たちの勇敢な姿に心動かされる良作です。

数々の名作映画を手掛けてきた敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインハーヴェイ・ワインスタインがどのように女性たちを扱ってきたか、またどうやって性暴力を隠蔽し続けてきたかを詳しく描いていて、そのあまりの卑劣な手口に不快になること間違いなしです。

一方でそんなクズ野郎と戦う女性記者をはじめ、勇気を振り絞って声を上げる被害者たちに感情移入するのは女性のみならず男性にとっても難しくないでしょう。

社会派ドラマなんだけど、スリラーの要素も含まれていてバイオレンス描写が全くないのになぜかドキドキします。さらに記事を書き終えたときの達成感や感動の要素も加わってなかなか完成度の高いドラマに仕上がっていました。

記者が社会の闇を暴くという意味では「スポットライト」を彷彿とさせるものがあり、ジャーナリスト系の映画が好きな人には自信をもっておすすめできます。登場人物たちもみんな実名だし、訴訟になるリスクも十分にあるでしょうが、それでもここまで切り込めるのはすごいですね。

ハーヴェイ・ワインスタインが設立した製作会社ミラマックスでは、彼に女をあてがうのが社内では共通認識になっていたようです。恐ろしいことに社員たちが彼に協力し、問題になったときは隠蔽するのが仕組み化されていたのです。

彼の手口はだいたいいつも決まっていたようです。狙いを定めた女子社員、または女優を自分のホテルの部屋に招き、バスローブ姿で迎え入れ、マッサージさせたり、隣に座らせたりしてセクハラをし、反応次第であんなことやこんなことをする、というもので気の弱い女性なら断れず、行くところまで行ってしまうのです。

またそれを問題にしようとすれば仕事を失ったり、干されたりします。勇気を振り絞って裁判に持ち込んでも決して刑事事件にはならず、結局は示談で片づけられてしまう理不尽さを経験した被害者たちがもう二度と関わりたくない、話したくない、と思うのも無理はないですよね。

そしてそんな被害者たちの固い口をどうやってこじ開けるのか、というのがニューヨークタイムズの記者の最大の課題でした。それがいいことか悪いことかの判断も難しいところです。多くの被害者にとっては大きなお世話だし、せっかく忘れてたトラウマをほじくり返されるのもたまったもんじゃないでしょう。

ある日、突然記者が家に来て、「あなたの奥さん、昔性被害に遭われてるけど、それについてどう思いますか?」とか言われたらやっぱりきついよね。

それでもこれ以上被害者を出さないために記者たちが取材を断念せず、記事を完成させたことでハーヴェイ・ワインスタインの逮捕につながったと考えると、やっぱり彼女たちの仕事は正しかったと思いたいです。

この記事をきっかけに一大ムーブメントとなった#MeToo運動が2017年に起きて、その後ハリウッドでは労働環境が果たして改善されたんでしょうか。あるいは一時的に敏感になっただけでまた昔の体制に戻ったりしてないよね?

日本でも監督、俳優、プロデューサーなんかが少しずつ告発されるようになってきましたが、記事になって騒がれるだけで逮捕者がほとんど出ていないところを見ると、まだまだ日本社会全体が性犯罪に本気で向き合おうとしていないのが分かりますね。日本はまだまだ時間がかかりそうです。

一方でアメリカでは#MeToo運動に乗っかって嘘の性被害を訴える奴らも少なくないから、これまたややこしい問題ですよね。どこにセクハラの線を引くか、というのもこれからの課題になりそうだし、下ネタを言う前にまず相手の合意を得ないとダメな世の中になったりしそうですね。

この映画を見るまでは、#MeToo運動はてっきりSNS主導で始まったものとばかり勘違いしていました。だから時代性なんだなあ、と勝手に思ってたけど、裏では記者たちがそれこそものすごいアナログで地道な取材をしていたんですね。メールでも電話でもなく直接会いに行くっていうね。それも上手くいく保障もなしに飛行機に乗ってアポなしで会いに行くんだから。

その辺、映画ではテンポ良く、ちゃちゃっと描かれているけど、まあそれはそれは大変だったことでしょう。ほんと記者のみなさん、お疲れ様です。

コメント

  1. Canis より:

    (ご無沙汰しています)
    今日、映画館で観ました。
    映画自体も、映画男さんの感想も良いですね。

    私もMeTooはSNS有りきだと思っていたので、目からウロコでした。

    日本じゃ無理かな。

    • 映画男 より:

      感想気に入っていただけて嬉しいです。日本じゃまだまだ同じような運動に発展するのは難しそうですね。

  2. きのこ食べ過ぎ より:

    女性記者の証人の追い込み方が「闇金ウシジマくん」みたいで面白かったですが、これ何か興行的にはコケたんですか?

  3. シャインマスカット より:

    こんにちは。本作、映画男さんがお勧めなさっていて、かつ近くで上映していたので観ました。ドラマだけどドキュメンタリー、ドキュメンタリーだけどドラマみたいな作品でした。

    私もMetoo運動はTwitter発祥だと思っていたので、こんな背景があったとは初耳でした。

    本作、トランプ氏の名前をガッツリ出したり、映画祭の「接待」を暴露したり、色んな意味でグレーな映画だと思いました。「直接描写」がないから「G」指定ではあるけど、「想像できるからこそのヤバさ」がジワジワと伝わりました。それにしても、女優・スタッフなど、計82人に手を出すって気持ち悪すぎました。

    女性記者達が外堀を埋めていくやり方、「真犯人」が「声のみで敢えて顔出ししない」からこそ、怖さが増すんように思います。

    勿論、「彼が諸悪の根源」、でもそれ以上に悪いのは体制や法律や意識なんだと思います。※顔出ししてしまうと、ある意味具体性が増しすぎて「勧善懲悪」話になってしまうのかなと。でも、あえて配役がなく、音声のみの存在として描くことで、この問題の抽象性を高めているように感じました。

    色々な立場から描くので、解釈に「幅」や「含み」を持たせています。賛否両論にはなりそうですね。

    一般的には、「笑った、泣いた、感動した!」というわかりやすい感情が出てくる作品はヒットしやすいですが、一方で色んなことを考えられるのも良い作品ではないかと思います。

    面白い映画って案外と地味なのかもしれないですね。ご紹介ありがとうございました。