ある日、留学先で殺人事件に巻き込まれたら。それも第一発見者の自分が容疑者にされたら。想像するだけでも恐ろしい実際にイタリアであった茶番裁判劇です。65点
アマンダ・ノックスのあらすじ
アメリカ人女性アマンダ・ノックスは20歳のときイタリアのペルージャに留学する。まもなくして彼女は地元のイタリア人男性ラファエレと知り合い、恋に落ちる。二人はデートを重ね、愛欲に溺れていた。
その日も一緒にラファエレの部屋で映画を見て一晩を過ごした。翌朝、アマンダが自分の家に帰るとトイレの至るところに血痕がついていることを見つける。ルームメイトのメレディスの部屋のドアは鍵がかかっていて呼んでも反応がなかった。彼女は怖くなってラファエレに電話し、ラファエレが警察に通報した。
警察が到着すると、ルームメイトの部屋のドアを蹴り破り、中に入っていった。するとそこにはメレディスの変わり果てた姿があった。
アマンダはいまいち事情を呑み込めず、警察署に行くとたちまちラファエレと一緒に容疑者として逮捕されてしまう。そしてそこから地獄の日々が始まる。
アマンダ・ノックスのキャスト
- アマンダ・ノックス
- ラファエレ・ソッレチート
- ニック・ピーサ
- ジュリアーノ・ミグニーニ
アマンダ・ノックスの感想と評価
ロッド・ブラックハーストとブライアン・マッギン監督によるペルージャ英国人留学生殺害事件で逮捕されたアメリカ人女性アマンダ・ノックスの事件前後の出来事をつづった冤罪ドキュメンタリードラマ。
イタリアに留学中、ルームメイトが殺害され、その犯人に仕立て上げられてしまった不運な女の子のやるせない話です。
被害に遭ったのは同じくイタリアに留学中だったイギリス人の女の子で、アマンダが若くて美人で冷たく生意気そうなアメリカ人女性だったことをいいことに好き勝手なイメージを植え付けられ、メディアや警察に濡れ衣を着せられてしまった、ありえない事件です。
事件当日、イタリア人の恋人と一緒に彼の家で時間を過ごしていた彼女は、事件現場の前で警察が大騒ぎをしている中、何が起こったのか状況が把握できないまま恋人とお互いを慰めるようにキスをしていたらそれを見たメディアや警察がこんな状況でイチャイチャできるなんてありえない、こいつらは怪しいと決めつけ、あることないこと言われ続け、気づけば取調室で何十時間も尋問を受け、証拠もないまま身柄を拘束されていたそうです。
別のインタビューで語っているんですが、アマンダはこのときほとんどイタリア語を話せなかったそうですね。まだイタリアに着いてから数週間しか経ってなかったんだから当たり前です。
それなのに通訳も用意されず、犯人と決めつけられ、警察に怒鳴られ、頭を叩かれ、何十時間も脅されたそうです。そんな中、彼女はとにかく自由にしてもらおうとあることないことを話してしまい、供述をコロコロ変えてしまいます。そしたらますます怪しいと思われて、事態が悪化し、あれよあれよという間に裁判が行われ、有罪判決を受けてしまうのです。
日本もそうだけど、田舎の警察がやばいのは世界共通なんですかね。もうとにかく現場検証をした刑事から検察からどいつもこいつもポンコツで普通だったら解決するのにそんなに難しくなさそうな事件なのに奴らがわざわざ複雑にした感があります。
ちゃんと調べればアリバイだってはっきりするだろうし、そもそも最初から偏見を基に犯人を決めつけてるから捜査どころの話じゃないんですよ。
ポンコツだけならまだしも事件現場や被害者の所持品やDNAサンプルの扱いもいい加減だから、いろんなところにいろんな人のDNAが付着してなにがなんだかわからなくなってる始末です。それなのに裁判ではさも容疑者たちが事件現場にいて、容疑者たちのDNAがついていたみたいに主張し、事情を分からないメディアはそれを報道するから判決が出る前から有罪のイメージが確定しちゃってるようなものでしたね。イタリアって感情論で判決が決まるのかよ。
一方、この映画も事件に対する情報の伝え方がだいぶ散らかってる印象を受けますね。正直、この映画だけの情報では実際は何が起きたのか分からない部分も多いです。あえて触れてないことが多いような印象を受けました。アマンダにフォーカスするばかりに有罪判決を受けたルーディーのことには少ししか触れないのはダメでしょ。ルーディーが有罪である確固たる証拠を掘り下げたら自然とアマンダの関与説が薄らぐんだからそれをしないでどうするよ。
あと刑務所生活のことももっと話せばいいんですけどね。そうすればアマンダにふりかかった災難がより強調されていたと思います。
この映画に冤罪事件の被害者となったアマンダとアマンダの恋人が出演しているのはまだ分かるんですよ。何年も経ってやっと自分の言い分を聞いてもらえるのは彼らの名誉を回復するためにも重要なことでしょう。
その一方でどの面下げてか、当時嘘を書きまくったジャーナリストや検察官まで平気な顔をして出演しているんですよ。一体どんな精神状態に陥ったらこの映画にヘラヘラ出演できるんだよって。
検察官なんていまだに「私にとって彼女は有罪だ」とか言ってるからね。嘘ついたから有罪なんだって。そりゃあ嘘ぐらいつくだろ、拷問されれば。証拠は二の次でよく検察官なんてやれるな。
アホのせいで人生をめちゃくちゃにされたのはなにもアマンダとその恋人だけじゃありません。被害者遺族もまた二転三転する犯人に対して感情を振り回されたのはいうまでもないでしょう。こいつらが犯人ですって言われて彼らを憎み続け、数年後にはやっぱり無罪でしたって言われる気持ちといったら想像するだけでも恐ろしいですよね。
長年正義を求めて戦ったアマンダは無罪を勝ち取ってからもメディアに植え付けられた負のイメージを払拭することは難しかったそうです。どこに行っても声をかけられ悪い女として見られ、プライベートは完全に失われたようです。多くの人は無罪になっても本当は彼女がやったんじゃないのかなどとも思っていたでしょう。
アメリカに帰国してからもメディアは彼女を追いかけまわして家族にまで失礼なことを言ったり、訴訟起こしたほうがいいよね。
もしペルージャなんかに行かなければこんなことにはならなかった、と思うと運命の残酷さを感じずにはいられません。それはアマンダだけじゃなく、殺人の被害にあったメレディス、そしてメレディスの遺族も同じことが言えますね。慣れない土地にいる間に事件に巻き込まれるのは本当勘弁ですね。
コメント
『殺人者への道』やこれを見ると、冤罪で捕まってしまう事は世界中の誰にでもあり得る事ですね。
予防策は捕まらないこと、しかない気がします。
釈放されて間もない時、アマンダの父親に記者が、早く本を書くなりメディアに出ないと娘の商品価値が下がりますよ?と言っていたのには閉口しました。
海外で起こったことが特に怖いですね。言葉も通じないのにどんどん裁判が進んでいくのは怖かったはずです