これといったインパクトはないけれど、社会人になり始めたばかりの登場人物のありがちな葛藤や感情を描いた良質な邦画。演技も悪くないし、脚本もちゃんと書けています。53点
明け方の若者たちのあらすじ
印刷会社に就職が決まった僕は、就活仲間たちと明大前の居酒屋で就職祝いとして集まっていた。そこに来ていた美人の彼女は、来て早々一人で帰ろうとしていた。帰り際、彼女は僕に携帯電話が見つからないからといって、自分の番号を教えてきては携帯を鳴らしてくれるように頼んできた。
それから少しすると、彼女から一緒に飲もうと誘われ、僕は飲み会を抜け出し公園に向かった。それをきっかけに僕は彼女にのめり込んでいくも最初からそれは叶わぬ恋であることを分かっていた。
僕は大きな夢を持って印刷会社に入社したものの、いざ仕事が始まると地味な人事部に配属された。それは自分が想像していた会社とは大きく異なった。刺激がなく退屈で、こんなはずじゃなかったとばかり思っていた。
それでもなんとなく会社に居続けた。彼女がいてくれればそれでよかったからだ。ところがある日を境に彼女からの連絡がピタリと止まってしまうのだった。
明け方の若者たちのキャスト
- 北村匠海
- 黒島結菜
- 井上祐貴
- 楽駆
- 菅原健
- 高橋春織
- 三島ゆたか
- 岩本淳
- 境浩一朗
明け方の若者たちの感想と評価
松本花奈監督による、新入社員が恋愛や仕事で思い通りにいかず夢と現実のはざまでもがき苦しむ姿をつづった青春ドラマ。カツセマサヒコによる同名小説の映画化。この続きに「ある夜、彼女は明け方を想う」という作品があるので合わせて鑑賞することをおすすめします。
男性向けのストーリーで20代前半なら共感でき、30代、40代なら昔を懐かしむ話になっていて、どこか「ボクたちはみんな大人になれなかった」を彷彿とさせます。
前半は甘ったるく、むずがゆく、幼稚な恋愛ドラマのようなエピソードが満載なのに対し、後半になると前半のフリが見事に効いてきて割としっかりとした物語になっているのが特徴です。いろいろと突っ込みどころはあるけど、邦画にしては上出来だと思いました。
特に恋愛エピソードの流れは上手ですね。さも邦画によくある美男美女によるピュアな純愛を描いているかと思いきや実はただの悪い女の話だった、というオチは素晴らしかったです。あの見せ方にはまんまと騙されたし、あのおかげで後半ストーリーを見る目が変わりました。
美化しまくった男女のストーリーになりかけたところで非情な現実を見せ、女の恐ろしさを教えているかのような計算高いヒロインもいいですね。
そういえば出会いから、最初にホテルに行くところからなにからなにまで全部主導権を彼女が握っていましたねえ。それも逃げ道を作るためか彼女が積極的に行っているようで実は男に自分が望む行動を取らせているのが恐ろしく、なかなかのやり手の悪女でしたね。素敵です。
それにまんまとやられ、傷ついてしまう男の単純さと弱さを見せられては、世の男性視聴者なら苦い思い出が蘇ってくるんじゃないでしょうか。
男が浮気をして、不倫をして、女性を傷つけてみたいな話より、この映画のようにその逆パターンのほうが男にはむしろ刺さる、ということも分かりました。その感覚はなんなんでしょうね。被害者意識なのか。トラウマなのか。
失恋後のストーリーは、サラリーマン3人が酔った勢いで風俗に行ったり、昔の友人がネズミ講の勧誘をしてきたり、現実味が増してあるあるエピソード集みたいになっていきます。そして最後はエモい感じでちょっと寂しげに終わっていく青春を感じさせるエンディングになっていました。
物語の序盤には登場人物が散々寒いセリフを吐くんですが、それを終盤で同じ人が「そういえば俺たち昔あんなこと言ってたよなあ、あの頃は若かったし、今考えるとださいよなあ」と振り返るくだりはすごいテクニックだと思いました。
つまるところ寒いセリフを吐き捨てたまま終わらせないんですよ。本気で格好付けにいっては滑り倒す邦画が多い中で、ちゃんと客観的に見れる人たちがあえてダサいセリフを登場人物たちに言わせてることが分かって安心しました。
文句をつけるとしたら歯磨きシーンとベッドシーンでしょうか。狭いバスタブの中でカップルが喋りながら歯磨きをする、という行為がわざとらしくて違和感ありまくりです。
ベッドではキスはちゃんとしてるけど、男女の絡みではバスローブをしっかりつけたまま一糸乱れず愛し合う、という新技を出してきたのには笑いましたね。男女ともに「邪魔だから脱いじゃおうよ」とは決して言わず、バスローブにこだわりがあるとしか思えないほど、最初から最後までバスローブ姿なのが非現実的すぎてダメでしたね。シーツにくるまるっていうのは今までもあったけど、はだけないバスローブって。
コメント
やっぱり続編よりこっちが良かったです。
こんなに若い監督なのに社会人の悲哀とか描けることに驚きました。
もともと1つの小説をあえて2つの映画に分けたんだとしたら、正解でしたね。
前編も続編も人物描写が鋭いですよね。続編のほうは小説にない完全オリジナルだそうですよ。
個人的には、不快なシーン多いのに観ちゃう映画でした。退屈はしなかった。
脱がないのに長い絡みシーンの北村の顔アップは、何を見せられてるの?て気になりましたし、
わざとかな?黒島結菜の、顔はブスじゃないのにパっとしない女感、まー虫みたいな髪型と服が、似合わない似合わない(笑)
そのパッとしない女にふり回される北村、最高でした!手を繋ぐところの表情も、気持ち悪くてよかった。
風呂のシーンはわたしも嫌い。床にぺっするな。シンプルに汚ぇ。
なのに「こんなことしてみたいでしょ私たちリア充でしょ」感が鼻につきます。
まさに!文句をいいながらワイワイ観る映画でしたね。
むかつくんだけど、見れちゃうっていうのがすごい作品ですね。
何度もコメントすみません
よければ池松壮亮、伊藤さいりちゃん主演の「ただ思い出しただけ」も観てください。
この映画に似たよーな邦画ですけどそっちののほうが好きです!
まだネトフリであるはず!
「ただ思い出しただけ」ちょっと見てみたんですが、合わなくて途中で断念しました。また機会があれば再チャレンジします。
やや!
映画男さんの文句を楽しみにしてましたが、
なんと、文句もでないほどでしたか…
残念!ちょっとでも観てくださり、ありがとうございます!