それほど残酷でもない、ほっこりほのぼのおとぎ話。可愛いキャラクターが満載で、家族で見るのも問題ない作品です。55点
ほんとうのピノッキオのあらすじ
大工のジェペットは貧しく、一人で寂しい生活を送っていた。そんなある日、町に操り人形の劇団がやってくる。ジェペットは木製の操り人形に強い興味を持ち、自ら人形を作ることにする。そうして世界中を旅にしながら人形劇でお金を稼ごうという計画だった。
ジェペットは操り人形をピノッキオと名付けることにした。ジェペットは自分の息子同然に愛情を込めてピノッキオを作った。製作中にはよくピノッキオに話しかけていた。
するとあろうことかピノッキオがジェペットのことを「お父さん」と呼んでくれた。ジェペットは父親になったことを大喜びした。そしてピノッキオを学校に通わせることにした。
ところがピノッキオが学校を抜け出し、操り人形の劇団のところに行くと、劇団の座長に目を付けられ誘拐されてしまうのだった。
ほんとうのピノッキオのキャスト
- ロベルト・ベニーニ
- フェデリコ・エラピ
- ロッコ・パパレオ
- マッシモ・チョッケリニ
- マリーヌ・バクト
ほんとうのピノッキオの感想と評価
「ゴモラ」、「ドッグマン」などで知られるマッテオ・ガローネ監督によるイタリア映画。童話「ピノッキオの冒険」をもとにしたダークファンタジーです。
ディズニーのピノキオと違って、「残酷な大人のおとぎ話」などと宣伝されていますが、ちょっとダークな箇所はあるものの子供でも十分に見れる作品です。
残酷だとされているのは、ピノッキオが首をつられたり、燃やされそうになったり、海に沈められたりするシーンがあるせいです。ただ、どのシーンもグロテスクに見せているわけではないので、子供には絶対見せられないというほどのものではないでしょう。
やはりディズニーのピノキオのイメージを植え付けられているせいか、ピノキオといえば、嘘をついたら鼻が伸びる展開を期待してしまっていた自分がいましたが、それはありませんでした。童話の原作とディズニー映画がそもそも大分違いますからね。
原作自体がイタリア文学というのもあってか、イタリア語がものすごく世界観にしっくりきています。特にピノッキオが話すイタリア語がすごく可愛いですね。
「ライフ・イズ・ビューティフル」や「ニューシネマ・パラダイス」とかもそうだけど、イタリア人少年の可愛さって別格ですね。あるいはイタリア映画が少年の使い方が上手いのか、どっちなんでしょうか。
ストーリーはピノッキオが誘拐され、父親と離れ離れになって、彼が色んな人の助けを借りながらなんとか父親を探し出し、最終的には人間の子供になるのを目指す、というものです。
ストーリー性でいうと、そこまでそれぞれのエピソードにつながりはなく、上手い構成とは決していえません。ピノッキオが悪い大人に騙されて、誰かに助けられる。また別の悪い大人に騙されて、別の誰かに助けられるといった感じで、父親を見つけるまでは目的がはっきりしているのに対し、再会後にそれが失われてしまったところがありました。
そして最後は、もういいよ人間にしてやるよと言わんばかりに妖精に人間にしてもらって、大喜びで幕を閉じるっていう強引なノリになっています。ただ、木製のときもほぼほぼ人間と同じような能力を持っていたので、人間になったことでピノッキオの生活がどれだけ向上するのかは謎でしたね。逆に痛みとか病気とか弱くなるんじゃないのかな。
それほどピノッキオも人間になりたい、なりたいって強く願ってる風でもなかったし、もうちょっと人間に憧れる、嫉妬する、または人形であることで差別を受けるシーンがあってもよかったですね。みんな結構すんなり人形のピノッキオを受け入れてるところは優しいんだけど、あれ?って思っちゃいましたね。ストーリー的にはもうちょっとです。
一方でヴィジュアル的にはおとぎ話風の世界を見事にかもしだしていて、木製の操り人形のメイクはかなり完成度が高かったです。木の質感がとてもよく、人形と人間の中間のような生き物を作り上げていました。劇団の人形たちもみんないい感じだったし、一度触ってみたくなる木の美しさが出ています。ああいう技術日本の映画会社にないですよね。
しかしながらやはり最終的にはピノッキオが可愛い、というところに評価は集中してしまうんじゃないでしょうか。ピノッキオからキスしてもらったら誰もが大喜びするっていうのも頷けるほどです。木製の操り人形がキスしているっていうのもなかなか可笑しな絵だっし、微笑ましかったです。
ピノッキオはアホだからか、あるいは純粋だからか、悪い大人に対しても平等に接するのが印象的でした。座長に誘拐されて、燃やされそうになってたのに最後は「ありがとう」とか言ってお別れしてたしね。どんだけ人がいいんだよって。
ピノッキオ以外のキャラもなかなか濃いキャラが集まっていて、猿の裁判長や学校の先生なんかはイタリアンコントです。「ここでは無罪の人間が刑務所に行くんだ!」とかいって刑務所送りにさせられちゃうの面白いですね。刑務所に行かないためにはどれだけ悪いことをしたか武勇伝を語らないといけないっていうのも受けます。あれは冤罪や悪い奴らが罰せられない社会風刺なんですかね。
イタリア映画といえばロベルト・ベニーニっていうぐらい毎度お馴染みの彼もまたベタなイタリア人のおっちゃんをコント風に演じていましたね。彼に関してはそこまでコメディ要素は感じられなかったし、今回の演技のわざとらしさは賛否両論がありそうです。
まあ、全体的には十分に見れる映画でした。ディズニーの童話より、これぐらいダークな要素があるぐらいがちょうどいいかなという気もしましたね。妖精がピノッキオに「人間になるにはちゃんと学校に行かなきゃダメよ」って言っていたのにはちょっと笑っちゃいました。教育を受けないと人間になれないわよっていうメッセージは子供たちに聞かせるにはもってこいかもしれませんね。
コメント
映画男さんこんにちは。私も先週本作を観ました。面白かったです。
ピノッキオが失敗を繰り返しながらも学んでいく様子は、まるで人間の子供のようでした。確かに、イタリアの少年は可愛いですね。
一方で、人形劇の人形やサーカスのクラウンに小人症の役者を起用したり、キツネとネコの悪党コンビに足の障がいと盲目の設定を取り入れたのは、「障がいと貧困の社会的背景」が伝わってきて、人間の闇を感じました。
さらに、プレジャー・アイランドの主人の少年に対する「目線」は、気持ち悪ささえ覚える程でした。ピノッキオら少年がロバにされたのは可哀想でした。
妖精やカタツムリ女、猿の裁判官、大きな鮫、人面マグロなど、魑魅魍魎とした世界観は忘れられないですね。
童話はこのぐらいのダークさがちょうどいいかな、という路線だったと思います。
お返事ありがとうございます。確かに童話って結構ダークですね。イソップ童話に然り、グリム童話に然り、日本昔話に然り。
本作、結構観ている人が多くて、パンフレットが完売した話を聞いたので、ハマる人にはハマるのかなと思いました。
童話のピノキオをほとんど知らないので、こんな話なのね、と純粋に楽しめたのと、やはり、このダークさが良かったですね。
私も童話を実写にしたら、なかなか不気味なはずだと思っていたので、ディズニーアニメの実写化よりよっぽどいいと思いました。
子供たちみな、とても自然で笑うシーンなんかは本当に笑っているようで可愛かったですね。
寓話こそダークにしたほうが面白そうですよね