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ハニーランド永遠の谷は養蜂で生きる女性の物語!感想とネタバレ

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自分の生まれ育った土地と共に生き続ける女性養蜂家の貴重な映像集。こんな生き方もあるんだなぁ、と感心させられました。66点

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ハニーランド永遠の谷のあらすじ

ハティツェ・ムラトヴァは、北マケドニアのロゾヴォの僻地で高齢の母親と二人暮らしをしていた。

自然養蜂家の彼女は谷で取ってきた蜂の巣を自宅の庭で管理し、ハチミツを売って生計を立てていた。そこには水道も引かれていなければ電気も通っていない。

ハティツェの母親は盲目で、ベッドで寝たきりだった。二人にはほかに行く場所もなかった。蜂の養殖が唯一の収入源で、そこではほかにやれることもなかった。

ハティツェは収穫できたハチミツは「半分は自分に、半分は蜂に」という昔からの伝統と習慣を守っていた。それによってエコシステムのバランスが保たれることを知っていた。

そんなある日、ハティツェの家の隣にトレーラーと家畜を引き連れて、あるトルコ人の家族が引っ越してきた。夫婦のほかに7人の子供がいた。

孤独に暮らしてきたハティツェにとっては、トルコ人家族の交流は刺激的だった。ハティツェは子供たちとすぐに打ち解け、彼らの面倒もよく見るようになった。

ところがトルコ人家族の夫フセイン・サムがある日、見よう見まねで養蜂を始めたことで問題が発生した。

フセイン・サムはハチミツで一儲けしようとする男の誘いを受け、ハティツェの助言を無視して、取れるだけのハチミツを一度に収穫しようとしたため、エコシステムが崩れ、ハティツェの蜂まで死なせてしまうのだった。

ハニーランド永遠の谷のキャスト

  • ハティツェ・ムラトヴァ

ハニーランド永遠の谷の感想と評価

リューボ・ステファノフとタマラ・コテフスカが共同監督した、北マセドニアで自然養蜂を営む女性を追ったドキュメンタリー。2020年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞と国際長編映画賞のノミネート作品です。

主人公もテーマも内容もとても地味ではあるものの、近代社会と離れて自分のライフスタイルを貫く、一人の女性の生きざまを映した興味深い記録映画です。

正直、娯楽性に欠けるし、売れる映画じゃないです。でも知られざる世界を覗き見できる貴重な映画であることには違いないですね。

大衆向けじゃないので、きっとこれは日本で公開されないだろうなぁ、と思っていたので、公開が決まってとても嬉しかったです。

ドキュメンタリーにおいては題材や主人公選びが重要なカギとなってきますが、この映画の場合、ハティツェ・ムラトヴァという珍しい生き方をしている人物を見つけてきた時点で半分成功していますね。

そして3年以上にわたって彼女の生活に密着したことが、この映画を一つの芸術作品に仕上げた理由でしょう。密着っていっても大都市の豪邸に住んでる歌手を密着するのと訳が違うからね。

誰も住んでいない僻地で、電気も水も通っていないようなところだから、撮影スタッフは3、4日泊まって、近隣の都市に行って機材を充電してまた撮影場所に戻ってきては3、4日泊まるというのを繰り返したんだそうです。まじ「ミス・アメリカーナ」とかの監督は見習ってもらいたいですね。

この映画の主人公は、年齢不詳の中年女性ハティツェ・ムラトヴァ。彼女は寝たきりのお母さんと二人暮らしです。

寝たきりのお母さんは85歳。あの生活スタイルにしては相当な長寿といえますよね。あれも自然のハチミツのおかげなのでしょうか。

ハティツェは一人で崖を登り、蜂の巣を手づかみで家に持って帰ってきては、自宅で養蜂をします。

慣れているからか手袋やネット付きのフェイスマスクを使うときと使わないときがあって、そのワイルドさに驚かされます。見るからに蜂と友達であるのが伝わってきて、慣れた手つきはまさに職人という感じがしますね。

そんなハティツェはときどき町に出て行き、ハチミツを売り、その売り上げで細々と生活しているようです。

一方でハティツェの隣に引っ越してきた遊牧民のトルコ人一家は、養蜂が稼げると聞いて不用意に手を出します。しかし知識ゼロ、経験ゼロであることから当然蜂に刺されまくっていました。

お父さんやお母さんが刺されるならまだしも、まだヨチヨチ歩きの赤ちゃんまで顔中刺されてパンパンに腫れていたからね。

それもそのはずお父さんのフセイン・サムが経験者の助言を全く聞かずに蜂を怒らせるようなことをし続けたからです。

金儲けの手段としか考えてないから、ハチミツの収穫においても、取れるだけ取ってやろうと欲張るから、ハチミツを失った蜂たちが隣の家のハティツェの蜂を攻撃しては蜂が全滅してしまう始末です。

挙句の果てには木の中にハチの巣があると分かると、木を電ノコでバッサリ切ってしまう、という自然を無視した行動に出ます。

ハティツェからすれば自分がずっと守ってきた伝統や掟をよそ者にいとも簡単に壊され、自分の生活を脅かされることになったわけで、その苦しみとストレスたるや想像を絶するレベルですね。

するとトルコ人一家に不思議なことが起こります。養蜂がダメになったかと思ったら、今度は家畜の牛まで次々と伝染病にかかって死んでいき、大事な財産を失ったのです。

まるでそれは大地が下した天罰のようで、おとぎ話みたいな展開でした。そしてダメだこりゃ、と思ったトルコ人一家は早々とその土地を引き上げて、またほかの場所へと移動していくのでした。

もともと遊牧民だから土地に対する愛着がなさすぎて笑っちゃいます。ずっとその土地で生きてきたハティツェとの温度差といったらないですね。

できすぎた話みたいだけど、トルコ人一家はどこか資本主義社会を象徴しているようで、稼げる場所を見つけると、一儲けしようとどこからともなくやってくる悪徳国際企業のようにも見えました。

現地の文化や習慣のことなんてお構いなしで、好き勝手やって、環境を破壊し、いざ稼げないと分かると、またささっと引き上げて、散々土地だけ荒らして帰っていく奴らみたいですね。

そしてそんな奴らに少なからず影響を受けながらも、なんとか自分の守るべきものを守っていこうとするハティツェの姿には、人生を感じずにはいられません。

ハティツェだってもしかしたらあの場所を出ようと思ったこともあるかもしれませんね。しかし体の弱った母親を抱え、どこへも行けなかった。あるいはずっと養蜂しかしてこなかった彼女にあそこを出て行く勇気が湧き起こらなかったのかもしれません。

あの場所で生まれ、あの場所にずっと居座る、それもまた人生ですね。果たしてハティツェの人生はこれからどうなっていくんだろう、とついつい大きなお世話な想像を巡らせてしまう、そんな映画でした。

コメント

  1. Delrieu Atsuko より:

    ニューカレドニアのヌメアで今晩この映画を見ました。私も養蜂をしているので(半分半分がモットー)とても興味深く観ました。ハティシエはこの映画が成功を収めたので、関係者からお兄さんの住む村に家を買ってもらったそうです。でもそこから山や住み慣れた土地に通って養蜂を続けているそうです。

  2. アオヤンマ より:

    これは観ます。