フェアウェルは笑いあり、感動ありの家族ドラマ!感想とネタバレ

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笑いあり、涙ありの芸術路線家族ドラマ。あざとい演出がないのに、ついつい感動させられる作品です。78点(100点満点)

映画フェアウェルのあらすじ

THE FAREWELL Trailer (2019)

ニューヨークに住む中国系アメリカ人のビリーは中国に住む祖母のナイナイと仲が良く、よく電話で話をしていた。

ところがある日、ビリーはナイナイが末期癌であることを両親から聞かされる。それもあろうことは本人は癌であることを知らないという。

家族はナイナイに癌であることを隠し通すつもりだった。そこでビリーの両親はビリーの従弟の結婚式に参列するという名目で中国を行くことにする。

しかし両親はビリーに対し、彼女が悲しい顔をしてナイナイに癌のことを知られてはいけないから中国には来るなと忠告するのだった。

それでもビリーは両親の反対を押し切って長春までナイナイに会いに行ってしまう。

結婚式を前にナイナイは自分の家族が十数年ぶりに集まったことを心から喜んだ。ビリーはそんなナイナイを見て果たして病気のことを隠すことが正しいのかどうか強い葛藤に襲われる。

映画フェアウェルのキャスト

  • オークワフィナ
  • ツィ・マー
  • ダイアナ・リン
  • チャオ・シューチェン
  • ルー・ホン
  • チアン・ヨンポー
  • アオイ・ミズハラ

映画フェアウェルの感想と評価

ルル・ワン監督による、中国とアメリカの両文化を上手く比較している家族ドラマ。オール中国人キャストで、ほとんど全編中国語にも関わらず、アメリカで高い評価を得た珍しい作品です。

2018年には「クレイジー・リッチ」がオール中国人キャストで、興行成績1位の座を奪い話題になりましたね。

ただ、「クレイジー・リッチ」は大衆向けの薄っぺらいフェイク娯楽ドラマだったのに対し、この映画は監督の実体験を基にした文化、伝統、そしてアメリカとの対比を感じさせるリアルで質の高い作品になっています。

ストーリーは、一族の長老であるおばあちゃん、ナイナイが末期癌にかかったことを孫のビリーが知るところからスタートし、子供の頃にアメリカに移住しすっかりアメリカナイズされたビリーと中国の家族との考え、習慣、文化の違いを浮かび上がらせていきます。

人間の死や家族に対する哲学の違いをアメリカ育ちのビリーの視点で上手く描いていて、ビリーの視点がそのまま中国文化を知らない視聴者の視点とぴったり重なるのが成功の鍵だったんじゃないかなぁ、と思いました。

家族が癌にかかったときにそれを本人に伝えるか、あるいは隠すか、という部分にまずものすごくそれぞれの文化の特徴が表れますよね。個人主義のアメリカ人からしたら本人に言わないなんて考えられないでしょうからね。

日本でもひと昔前までは癌にかかっても本人に伝えないでおくことなんてざらにありましたが、今では大分変わったんでしょうか。それともまだ秘密主義を通している家族がいるのかな?

中国においてももちろん家族にもよるだろうけど、この映画の中では、「癌が人を殺すのではなく、癌の恐怖が人を殺すんだ」と語られているほか、個人は家族、社会の一部なんだから癌を患っている本人だけの人生ではない、という中国人の考え方が描かれていて興味深かったです。

おばあちゃんの人生はおばあちゃんだけのものではなく、家族みんなのものだから、家族がみんなで彼女の死に対する感情を胸に抱えていくんだ、という連帯責任的な発想がなんとも中国っぽいです。

また、おばあちゃんもおばあちゃんでおじいちゃんが癌だったときに嘘をついたという前科があって、おばあちゃんを純粋無垢な家族の嘘の犠牲者のように扱っていないのも絶妙な設定だと思いました。それが家族親族の約束事としてずっとやってきたことだ、と言われたら、もう何も言えなくなっちゃうからね。

僕はどちらかというとビリー側の考えに近く、やっぱりおばあちゃんの人生なんだからちゃんと本人には知らせるべきだという意見に賛成なんですが、その一方で嘘をつき通そうととする中国人家族の絆の強さに憧れるところもあります。

劇中、親族みんなで孫の結婚を亡くなったおじいちゃんに報告するためにお墓参りに行くシーンがあるんですが、ああいう先祖を大事にする気持ちとか、お墓参りのために家族が集まる機会をわざわざもうけたりするところなど、個人主義の人々の考えでは体験できないハートフルな一面ですよね。

全体的に賛成できないこともたくさんあるし、文化の違いも強く感じるけど、その違いをただネガティブに映すのではなく、美しく描いているのがいいです。

異文化をただ笑いにするという安易は方向にはいかず、終始理解できないものに対してのリスペクトが感じられて、中国系アメリカ人の監督だからこそ撮れた貴重な映画だなぁと思いました。

同じ中国人といえど、子供の頃からアメリカで育ったビリーと大人になってアメリカに移住した両親、そしてずっと中国で暮らしている叔父さん叔母さん、おばあちゃんたちにはそれぞれアイデンティティーに対する独自の思い入れがあるのが分かります。

それは決して中国系アメリカ人の心にだけ響く問題ではなく、きっと多くの移民や移民の二世、三世には自分事のように思えるはずです。

物語が始まってまず最初に気づくのは映像の暗さです。テーマが末期癌の祖母をめぐる祖国中国とアメリカに移住した家族のドラマになっているので、大事な人を失う悲しみと絶望を演出するためにああいう色合いになっているのでしょうか。

にも関わらずただの悲しい感動の家族ドラマにはなっておらず、シリアスな状況の中にもユーモアが度々顔を出します。それだけ緊張と緩和の使い分けが素晴らしく、派手さはなく、地味な話ながら会話だけで十分に楽しめました。

キャスティングも絶妙ですね。ヒロインを演じたラッパーであり、コメディアンのオークワフィナは役にはまっていたし、素晴らしいパフォーマンスを見せました。

ほかのキャストたちも「クレイジー・リッチ」のように美男美女で固めた嘘っぽいキャストではなく、中国のどこにもいそうな家族風にしていて好感が持てます。

ビリーの従弟が日本人女性と結婚するという設定になっているのも面白いですね。

僕が一番好きなシーンはラストの車に乗ってビリーとお母さんがおばあちゃんのナイナイトと別れるシーンです。あれは映画史上に残る別れのシーンじゃないかな。

なによりビリーじゃなくてお母さんのほうが泣いていたのにはぐっと来ました。あんなにギャーギャー泣くのは自分のスタイルじゃないと言ってたのに、もう涙を堪えられなかったんでしょうね。

普段耐え忍んで感情を内に秘めた人たちがふと耐え切れず悲しさを露わにすると、やっぱり美しいですね。

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