ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ(原題THE BIG SICK)

見る人を幸せな気持ちにさせる可愛らしい男女による恋愛ドラマ。愛と夢を存分に感じられる普通にいい話です。79点(100点満点)

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめのあらすじ

パキスタン出身のアメリカ人コメディアン、クメイル(クメイル・ナンジアニ)は、自分が原因で恋人の大学院生エミリー(ゾーイ・カザン)と別れてしまう。数日後、エミリーが原因不明の昏睡(こんすい)状態になり、クメイルは病院に急行する。エミリーの母ベスは娘を傷つけたクメイルを嫌うが、ある出来事をきっかけにクメイルとエミリーの両親は打ち解け始め……。

シネマトゥデイより

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめの感想

マイケル・ショウォルター監督による、アカデミー賞脚本賞にノミネートされたラブコメディ。パキスタン人男性と白人女性の人種の垣根を乗り越えた恋愛を描く、ロマンチックで、ちょっと笑える感動話です。

久々に見た面白くて、うっとりさせられる、恋愛ドラマです。普通にいい話でした。まず、主人公の男がパキスタン人というのが新しいですね。

基本、マイノリティーを主人公にしないハリウッドにおいて、アラブ系イスラム教徒のパキスタン人と白人女性の恋愛を描くこと自体が挑戦的で、二人の関係からアメリカに根付く人種問題、差別、偏見などを映していきます。

そしてまたイスラム教徒=厳格な家族という部分だけに終わらず、彼らの日常やユーモア溢れる部分にも触れていてステレオタイプを打ち破るような内容にもなっていて好感が持てました。

パキスタン出身のクメイルは売れないコメディアンで、夜な夜なステージに立っては少人数のお客さんを前にスタンドアップコメディを披露し、いつかコメディアンとして成功することを夢見ています。

一方クメイルの両親は、息子には弁護士になってもらいたいと望み、早く結婚して家庭を築いてもらおうと家にお見合い相手を次々と連れてきます。

そんな家族を他所にクメイルはある日、自分のショーを見に来ていた白人女性エミリーと出会います。二人は最初遊びのつもりだったのが、だんだんお互いにのこめり込んでいきます。

しかしクメイルは、パキスタン人女性との結婚を望む両親にはエミリーのことをなかなか話せず、そのことがきっかけでエミリーと喧嘩別れをしてしまいます。

ところがある日、クメイルは友人からエミリーが病気になり入院したことを告げられ、心配して病院に行くと、エミリーの容態が悪化し、こん睡状態に陥ってしまう、、、という筋書きになっています。

話の展開が予想外すぎて、色々な意味で意表をつかれました。ただの出会って、別れて、またくっついてという映画なのかと思っていたら、急に闘病ドラマのようなシリアスな話になったりして先が読めません。

主人公の男女の間には人種、文化、宗教、家族といった問題が立ちはだかり、若い男女があっさり上手くいく話になっていないところに見ごたえを感じましたね。

それに対し、コメディとしては笑えたり、笑えなかったりで僕にとっては爆笑できるほどツボにははまらなかったです。でもいくつか笑えるのはありました。

エミリーの両親がクメイルに911のテロの話をしたときはこんな会話になりました。

「いつかアラブ系の人に聞いてみたかったんだけど、911のことをあなたはどう思ってるの?」

「どう思ってるかって?悲劇だったと思いますよ、我々の最も優秀な人たち(テロリスト)が16人も死んだんですからね」

あれを恋人の両親に言って大いに滑るっていうね。あの状況でブラックなボケはダメだろ。

笑いより、恋愛エピソードのほうが可愛らしい話が満載で、お似合いの二人のやり取りを見ていると、うっとりしちゃうんじゃないでしょうか。

最初の頃の二人はお互い格好付けて、「今は恋人いらないんだよねぇ」と強がったりするのはあるあるですね。

エミリーが夜中に突然起きだして、一人でコーヒーを飲みに行きたいと無茶を言い出したものの、実は彼氏の家のトイレでウンチをするのが恥ずかしかっただけだったという下りは微笑ましいし、セックスしたばかりなのに服を着るときは毛布の中に隠れて着たり、エミリーのキャラがキュートすぎて、男性視聴者はメロメロになってしまうはずです。エミリー役のゾーイ・カザンは演技が自然だったし、はまり役でしたね。

好きなエピソードがたくさんあって、こんなにあれもこれも話したくなる映画は久しぶりです。

僕の一番のお気に入りは、クメイルとエミリーの両親が少しずつ打ち解けていく様子で、エミリーの母親が、クメイルに対して差別発言をした男に食ってかかる下りは、胸が熱くなりました。

また、エミリーの父親からは名言が聞けましたね。

「その人が生涯を共にしたい相手かどうかは自分が浮気をしたときに気づくんだ。浮気したとき最悪の気分になるから」

いいね、これ。

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめは実話

この映画の最大のサプライズ、それはこの話が実話に基づいているということです。僕は事前に何も知らずに見たので、エンドロールで実際の二人の写真が映ったときにはびっくりしてしまいました。

いい話だとは思ったけど、いかにもフィクションぽかったから、まさか実話を基にしているとは思いませんでしたね。

僕にとって実話かどうかは本来あまり関係ないんですが、この映画の場合主人公クメイルをクメイル本人が演じているところがユニークです。

そして奥さんのエミリーがこの方。脚本は二人で書いたそうです。その脚本がアカデミー賞にノミネートってすごくないですか?

二人はシカゴからニューヨークに引っ越し、クメイルはコメディアンを、エミリーはセラピストを指します。しかしクメイルに仕事はなく、長い間貧乏生活を強いられたそうです。

その後、二人でラジオ番組のポッドキャストをするなどしているうちにコメディアンとしての仕事が徐々に入ってくるようになり、今に至るそうです。ちなみにエミリーも今ではお笑いの脚本を書いたり、プロデューサーをしたりと芸能界で活躍しています。

人種や宗教の壁を乗り越えただけでなく、二人は夢を追ってお互いを信じ、成功を掴み取ったんですね。一見、ただの恋愛物語のようで、実は大いなるアメリカンドリームの話なのでした。

それにしてもお二人さん、お似合いですね。

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