あさがくるまえに(原題REPARER LES VIVANTS)

ティーネイジャーの男の子と中年女性のストーリーを絶妙に結び付ける、臓器移植をテーマにしたフランス映画。展開はスローだけれど、上手くまとまっている作品です。70点(100点満点)

あらすじ

早朝、サーフィンに出掛けた帰りに交通事故に遭ったシモン(ギャバン・ヴェルデ)は脳死と判定される。臓器移植コーディネーターのトマ(タハール・ラヒム)は、シモンの両親に移植を待つ患者のための臓器提供について相談をする。一方、心臓に病を抱えるクレール(アンヌ・ドルヴァル)は、心臓移植以外に生きるすべはないことを自覚していたが……。

シネマトゥデイより

「あさがくるまえに」は上質の医療映画!

フランス発カテル・キレヴェレ監督による、二つのストーリーを「心臓移植」でつなげるリアルな医療ドラマ。自然な演技、先の読めない展開、話に引き込まれるストーリーが良く、見ごたえのある大人向けの映画です。

前半、カメラはティーネイジャーのシモンを追っていきます。彼はある日、早朝に友達とサーフィンに出かけ、帰りの車中でウトウトと寝落ちします。ところが車が事故に遭い、シモンは意識不明の重態に陥ってしまいます。

医者の診断は脳死。すっかり変わり果てたシモンの姿を見た両親は動揺して取り乱します。そんなときに病院側から臓器提供を提案され、激怒した両親でしたが、頭を冷やしてから臓器を譲ることを決意します。

そこからカメラは、心臓病をわずらっているクレールを追い始め、子持ち、バツイチ、レズビアンである彼女の人生を映していく構成になっていました。

話の引っ張り方や演出からして、シモンとクレールがなにかしらの共通点があるのかといった期待を抱かせるものの、あくまでも二人は臓器提供者と受取人という関係でしかありません。

あそこで二人の間に変な偶然や関連性をストーリーに付け足すこともできたでしょう。それをやらなかったのはしかし正解だったと思います。

フランスの遠く離れた場所にいる、全くの無関係の二人がひとつの心臓によってつながる医学の神秘をリアルに表現することに成功していたからです。

亡くなったトムからクレールへと命がバトンタッチされるまでには実に多くの協力者が裏でサポートしていましたね。そんな過程もしっかり見せていて、最後に手術のシーンでクライマックスに持っていく流れはあまりにもスムーズで、芸術的です。

ディテールに凝った移植手術のシーンは圧巻でしたね。心臓のプルプルした感じとか、メスを入れたときの感触がこちらまで伝わってくるようでした。

臓器の提供を決意した両親から、手術に携わった医療チームまで、登場人物たちが思いやりに溢れていて強い人間性を感じさせます。

手術前にコーディネーターがトムに話しかける下りなんかは、リスペクトが感じられて見ていて気持ちが良かったです。「君の彼女がこれを選んだんだよ」と言ってイヤホンで音を流してくれるなんて粋な計らいだなぁ。

恋人のジュリエットが選んだ曲は海の波の音。サーフィンが大好きだった彼のことを思った最高の選曲でしたね。

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