2016/12/24

ギルバート・グレイプ(原題What’s Eating Gilbert Grape)

レオナルド・ディカプリオの才能が一番良く分かる映画であり、涙なしには見られない家族ドラマ。家族の問題を抱え、田舎町から出たことのない心優しい主人公の視点で描く、青春と感動の物語です。80点(100点満点)

あらすじ

自分が生まれ育ったアイオワ州の小さな町から生まれてから一度も出たことがないギルバートには、重い知的障害を持つ弟アーニー、夫の自殺から7年間も家から出たことがない肥満で過食症の母、そして2人の姉妹がおり、食料品店で働きながら家族の面倒を見ていた。そんな時、旅の途中でトレーラーが故障し、ギルバートの町にしばらくとどまることになった少女ベッキーと出会う。

wikipediaより

読者の服部さんのリクエストです。ありがとうございます。

ギルバート・グレイプの原題の意味

この作品は同名小説による映画化で、小説を書いたピーター・ヘッジズ本人が脚本を担当している作品です。監督は、「セイフヘイヴン」、「ヒプノティスト-催眠-」などのラッセ・ハルストレム。

英語タイトルの「What’s Eating Gilbert Grape」ですが、「What’s eating」は「What’s happening?」や「What are you doing?」と同じニュアンスで使われることがあります。また、「What’s eating you?」というと、「あなたは何にイライラしてるの?」といった意味にもなる表現です。日本語でその辺をニュアンスを伝えるのが難しかったので「ギルバート・グレイプ」に落ち着いたのでしょう。

ギルバート・グレイプの評価

1993年公開の映画で映像こそ古さを感じさせますが、ほかの部分のクオリティーが高いので、今見ても十分に心に残ります。

脚本、俳優、ストーリー、演出が分かりやすく、しつこさがないところに好感が持てます。感動的な映画ですが、あからさまに感動を狙いに行っているわざとらしいシーンが少なく、それでもシーンとシーンの間にふと涙がこぼれてしまうような切なさとやるせなさが全体に滲み出ているのがいいですね。

ストーリーは、家から一歩も出ようとしない肥満の母親、障害者の弟、年頃の姉と妹を持つ青年ギルバートの視点で、家族に対する義務感や自分の生まれた土地から出られずにただ時間だけが過ぎていくことへの苛立ちと葛藤を描いていきます。

舞台となっているのはアメリカはアイオワ州にあるエンドラと呼ばれる人口わずか数千人の田舎町。そこには数えるほどのレストランや店しかなく、スーパーは大手チェーンのが一つと地元の個人店が一つあるだけです。主人公ギルバートは、家族を養うためにその小さなスーパーで働き、仕事場に障害者の弟アーニーを連れていくなどして、ほぼ24時間弟の面倒を見ています。

父親が自殺し、長男は家を出たため、実質グレイプ家で唯一の男がギルバートです。そのせいか一家の女性たちは彼に余計に圧力と責任をかぶせようとします。特に障害者の弟のことに関してはいつもギルバートが責められ、理不尽ながらもギルバートはそれを黙って聞いているような、全てを耐え忍んでいるようなふしがあって、見ているこっちまでつらくなってきます。

一方で父親がいなくなってからというもの、心に傷を負い家から出なくなった肥満の母親に対しては、兄妹全員が敬意を払い、愛情を捧げている姿は健気であると同時に甘やかしすぎてるなぁとも感じられました。

なんで肥満が深刻な人に朝からベーコン食べさせるんだろうって思いますね。そもそも一日の初めの食事から間違っているんだって。あの家族の食事、全部油っぽかったですもんね。

驚きなのが母親役を演じたダーレン・ケイツは実は素人女優で、この映画が演技初挑戦だったそうです。彼女自身、実際に家から何年間も出ていなかったためにこの役に抜擢されたそうです。母親の設定やキャラクターがやけにリアルなのはそれが理由でしょう。冷蔵庫に飾られた彼女の若かりし頃の写真も本物だそうです。

ほかの主要キャストも言うまでもなく、素晴らしい演技を見せましたね。レオナルド・ディカプリオはダントツで一番いい仕事をしていました。この作品で彼はアカデミー賞にノミネートされていますが、落選したのが信じられません。

今見ても本作の演技が間違いなくレオナルド・ディカプリオの最高のパフォーマンスに思えてなりません。当時受賞していたら彼の人生もまた変わっていたことでしょう。もしかしたら栄光や名声に溺れて、悪い方向に行っていたかもしれませんね。

対する主演のジョニー・デップは、今までで一番格好良かったときがこの作品じゃないでしょうか。若いし、自然体で、後にいじったのか顔も歯並びも全然今とは違いますね。中性的な魅力があって、最近の作り込んだエキセントリックな感じではなく、ナチュラルなのがいいです。

ジュリエット・ルイスは可愛いし、この頃のメアリー・スティーンバージェンはめちゃくちゃセクシーですね。

ジュリエット・ルイス

メアリー・スティーンバージェン

僕の一番好きなシーンは、ギルバートが弟のアーニーを殴るシーンです。あれだけ一緒にいたら、殴りたくなる日もあるよなぁ。今の時代だったらあんなことが一度でもあったら、すぐに虐待だなんだって言われちゃうんだろうなぁ。

最愛の弟に手を上げてしまったギルバートは自分の行為に傷つき、家を飛び出して行きます。もうこんな家になんか戻るもんかと車を飛ばして町外れまで来ますが、そこでどうしても家族を捨てられない自分との葛藤に苦しみます。

自分を束縛し、自由を奪い、憎たらしくて仕方ない家族だけど、俺が今いなくなったらあいつらはどうなるんだろう、と思って引き返したのかもしれません。その辺の家族に対する憎愛を上手く表現しているのがよかったですね。

おそらく世界にはギルバートのような人がたくさんいるでしょう。好きじゃないけど、役割とか義務とか責任のせいで家族と離れられない人。また、そのせいで長く苦しみ続ける人。

僕は家を飛び出したら平気で帰らないタイプなので、ギルバートとは真逆ですが、あの状況で家族を見捨てる人、見捨てない人のどっちがいても、それはそれで人間らしいと思います。ギルバートがあそこでもし家族を捨てて、車を走り続けていたらと思うと、そっちのバージョンも見てみたい気がします。

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