クオリティーは高いのに最後の最後にならないと面白くならない戦争映画。もっとテンポがよく、エンタメ度が高かったら素晴らしい作品になっていたでしょう。65点
西部戦線異状なしのあらすじ
時は第一次世界大戦中の真っただ中、ドイツ人の少年パウルは家族の反対を押し切り、戦場に行くことを志願する。まもなくして彼は西部戦線に送られ、フランス軍を相手にした激しい戦場の最前線で戦うことになる。
銃撃戦が行われる度に大勢の死者が出、ドイツ軍の劣勢は明らかだった。武力、軍力、兵力の全てがドイツには欠けていた。それでもドイツ軍の上官たちはフランスに降伏するなどありえないと現実を見ようとしなかった。
パウルは戦場で時間を過ごす度に一人、また一人と戦友たちを失っていき、戦うことに意義を見出せなくなっていく。そんな中、ドイツとフランスの間で停戦協定が結ばれることになるが、、、、
西部線異状なしのキャスト
- フェリックス・カマラー
- アルブレヒト・シュッフ
- エディン・ハサノヴィッチ
- モリッツ・クラウス
- アドリアン・グリュー・ネヴァルト
- アーロン・ヒルマー
西部戦線異状なしの感想と評価
エドワード・ベルガー監督による同名小説の映画化で、アカデミー賞作品賞および国際映画賞ノミネート作品。
派手な演出はせず、戦争の無情さ、無益さを淡々に描いた欧州映画で、最後まで見るとその良さが伝わってくる良作です。国際映画祭で評価が高く、多くの賞を受賞しているのもうなずけます。
演技は自然だし、リアリティーもあり、お金も相当かかっています。戦場のシーンは緊張感も迫力もあるし、残酷なパートも包み隠さず見せるようにしていて、戦争の悲惨さを伝えるにはもってこいの作品じゃないでしょうか。
バトルシーンが良く、爆発は少な目だけど、その分戦いに生々しさがあります。特に火炎放射器とか戦車のシーンはすごかったですね。戦車が目の前に現れたときの絶望感といったらないし、人がひかれるくだりは怖かったです。
一方でペース配分にやや問題があり、なんでこのシーンにこんな時間使うんだよっていう部分が多々ありますね。そのせいで2時間半ぐらいの長尺ダラダラ映画になってるんですよ。
そのうえ映像と音楽が暗いのでかなり眠くなります。僕は5,6回目でやっと眠らずに最後まで見ることができました。それだけ退屈といってもいいでしょう。
いい作品なのに退屈とはどういうことかというと、簡単にいえば全体のレベルは高いのになんかいまいちノレないよね、入っていけないよねってことです。
それはなにもハリウッド映画のようなベタな戦争映画にしろってことじゃないんですよ。愛国心万歳、兵士たちは皆英雄みたいな演出はうんざりするし、その点この映画は正義も悪もなく、すごく客観的に戦争を描いていて素晴らしいんです。ドイツ軍視点なのにむしろドイツ軍のほうを悪役、汚れ役として描いていることには共感すら持てます。
ただし、キャラ構築がいまいちです。どの兵士もキャラが弱い。主人公のパウルですら、どいつがパウルが途中で見失ってしまうぐらい薄いんですよ。もっと顔のインパクトが強い奴とか濃いキャラを起用しないと。
唯一キャラ立ちしてるなあ、という人はドイツ軍の悪徳将軍ぐらいじゃないかな。こいつ、最後にみんなから裏切られたらいいのにって思うぐらい憎たらしさを引き出せてるっていう意味ではあのキャラは大成功で、逆にほかのキャラが優等生すぎて目立たないんですよ。
それはある意味、主人公ですら大勢いる兵士(駒)の一人として描いているともいえるでしょう。人の命が消耗品として扱われる戦争を表現するにはそのほうがふさわしいのかもしれません。しかしそのせいでパウルを応援したくなったり、パウル目線でこの映画を見ることはできず、没入感に欠けハラハラドキドキがないんですよね。
ラストシーンはどうなんでしょうかね。もう停戦が決まった雰囲気の中で、停戦協定が施行されるまで十数分というときに果たして奇襲攻撃したりするんですかね。奇襲攻撃するまではいいけど、11時になった途端に「撃ち方止め!」ってすぐ冷静に手を止められますか? 今さっきまで殺し合いしてた相手がすぐそこにいる状態ですよ。フランス軍からしたらギリギリで攻めに来たドイツ人たちは全員射殺ぐらいにしないと納得いかないんじゃないのかな。
物語が動きだすのが停戦が決まってからというのもどこか皮肉な感じもします。戦場では生き延びたのに戦場とは関係のないところで命を落とす者など、不条理さ、無慈悲さがより強調されていました。
逆にいるとそれまでの出来後は長い長いフリだったことにもなり、終盤に一気に伏線回収していく作品もいいんだけど、ちゃんとそれまでにも見せ場を作らないとやっぱり眠くなりますね。良作なだけにもったいないです。あと一歩で名作戦争映画になるところだったのに。
コメント
中断しながら見るという禁忌を犯しながら見ましたw
大袈裟な演出もなくずっしりといい作品だったなという感想だったのですが、映画としてはサラリとした印象なのはなぜ?と思っていた中、映画男さんの感想を見て腑に落ちました。
手に汗握るようなハラハラ感がないんですね。仰るように途中で主人公が分からなくなる時もありましたw
ただ、私もハリウッドの過剰演出、ヒロイズムには飽き飽きなので、好みも含めてその辺の足し引きが難しいなあと感じました。
やっぱり中断しましたか。あのテンポなら仕方ないですよね