2016/03/12

未来を生きる君たちへ(原題 HAEVNEN/IN A BETTER WORLD)

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第83回アカデミー賞外国語映画賞受賞作品。善悪をしんみり考えさせられる重くて真面目で見ごたえのある映画。暴力と復讐をテーマに置いたうえで、理不尽な世の中で生きることの難しさを上手く表現していました。73点(100点満点)



あらすじ

医師アントン(ミカエル・ペルスブラント)は、デンマークとアフリカの難民キャンプを行き来する生活を送っていた。長男エリアス(マークス・リーゴード)は学校で執拗(しつよう)ないじめを受けていたが、ある日彼のクラスに転校してきたクリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)に助けられる。母親をガンで亡くしばかりのクリスチャンと、エリアスは親交を深めていくが……。

シネマトゥディより

文句

見ごたえ十分でした。色々考えさせられましたね。

気の優しい父親アントンに育てられたエリアスは学校でいじめられてもなにも抵抗できない一方で、母親を病気で亡くし、怒りに満ちたクリスチャンはいじめられたら武器を使ってでも応戦する気の強いところがあります。挙句の果てにはいじめっ子を必要以上に怪我させてしまい、警察ざたにまでなってしまう。しかしそれ以降いじめはなくなり、考え方によっては復讐したおかげで問題が解決したことになる。

また、別のシーンではエリアスの父親アントンが道端で男に顔をひっぱたかれても何も抵抗しようとせずにその場をやり過ごします。その場にいた子供たちからしたらなぜアントンがやり返さないのか理解できない。警察を呼ぶこともできるのにそれもしない。後々、自分をひっぱたいた男の仕事場にアントンは子供たちを連れて乗り込んでいきますが、そこでもまた殴られるだけで決してやり返さない。それどころか「いいか、あの男は馬鹿だから殴ることしかできないんだ。ああいう男を怖がる必要はないんだよ」といって子供たちを諭すのです。しかし子供たちからしたら暴力をふるう悪い男がこらしめられない現状にどうしても納得がいかない。問題は未解決のままでやはり復讐が必要だと感じる。そのうやむやが後に大事件に発展してしまう。

職業が医師だということもありアントンは一貫して非暴力を信念としていました。それはそれでかっこいいけれども状況によっては非暴力の姿勢や慈悲の精神が悪い結果をもたらしてしまう、という事実をこの映画は上手く指摘していました。特にアントンが勤務しているアフリカの難民キャンプのようなところでは、妊婦の腹をナイフで裂いたりなどという考えられない暴力が日常茶飯事になっている。そんな状況下では、「君たち暴力はいけないよ。人間話し合えばわかりあえるんだから」などとは言えなくなってくる。普段平和主義者のアントンですら、自分が治療した極悪人の男がリンチされるのを見過ごす場面もあり、とても印象的でした。

治安の悪い国にいると、自分の身は自分で守るしかない、みたいなところがあって僕自身もブラジルにいるせいかそのうち銃を買おうと本気で考えています。そして暴力はいけない、復讐は復讐を生むなどというのは美しくてかっこいいけれど、万が一この先、自分が誰かに殺されるようなことがあったら、できれば誰かに自分の敵を取ってもらいたいと思うこともあります。法律がしっかり犯人を裁いてくれるのならまだしも、自分を殺した犯人が逮捕もされずのほほんと生きていくのだとしたら、自分の魂は行きどころを失ってさ迷い続けるのではないかと思っては悲しくなるのです。

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