2017/08/01

FAKE

ゴーストライター騒動のその後の佐村河内守を取り挙げた、何が嘘か本当か分からなくなる、見ごたえ十分のドキュメンタリー。映画として普通に面白いです。73点(100点満点)

あらすじ

2014年、聴覚障害を抱えながら「鬼武者」などのゲーム音楽や「交響曲第1番“HIROSHIMA”」といった作品により「現代のベートーベン」と呼ばれた佐村河内守が、実は耳は聞こえており、作品はゴーストライターの作曲だったと報道される。騒然とする状況で、自宅での撮影に応じた佐村河内は……。

シネマトゥデイより

文句

森達也監督による「現代のベートーベン」佐村河内守を追ったドキュメンタリー。メディアに袋叩きにされた男のその後の心境、騒動に対する弁明、自分を裏切った新垣隆への思いなどを赤裸々につづった興味深い記録映画で、彼の苦悩がにじみ出てくる作品です。

一方的に週刊誌やTVから批判されるだけで、真相を語る機会さえろくに得ることのできなかった佐村河内守にとってはこの映画が名誉挽回を図る絶好のチャンスにもなりうるし、あるいは逆に傷を広げてしまうリスクにもなりえたでしょう。

結論からいうと、この映画で森達也監督はある程度客観視しようとは努めているものの、できるだけ佐村河内守側に立って騒動と向き合おうとしているように僕の目には映りました。

そしてその手法によって世間を賑わせたあのスキャンダルを視聴者が別の視点で見れるように新たな気づきを与えています。

日本のマスコミはターゲットを定めたら、あとは一方的にいじめるだけの幼稚な集団なので、”いい人そうなおじさん”である新垣隆の声ばかりを面白がって、ずっと取り上げてきましたね。

佐村河内守の主張は無視し、都合の悪いところは報じず、彼の言い分は全く聞こうとしていなかったことに対して佐村河内守本人が強い恨みと不信感を持っていたとしてもなんら不思議ではないでしょう。

そんな佐村河内守の胸中をゆっくりと解き放っていくように森達也監督がインタビューアーとなり、佐村河内守と周囲の人たちから話を聞いていきます。自分の話を誰も真剣に聞いてくれなかったことを考えると、それは佐村河内守にとったら一種の救いでもあるのかもしれません。

特に時間を割いているのが佐村河内守と奥さんのやり取りです。誰と話すときでも手話で通訳し、甲斐甲斐しく夫の世話をする妻の姿は強く、美しいです。障害を抱える夫とそれを支える妻。文字通り二人三脚で生きている夫婦。僕はこの映画を夫婦愛を描いたドキュメンタリーだと捉えました。

しかしそんな夫婦の光景ですら、映画のタイトルのように全て「FAKE」だとしたら? ここに映っている全てがやらせで佐村河内守がただ演技しているだけだとしたら?とそんな疑念を頭によぎらせるのがこの映画の醍醐味であり、佐村河内守のスキャンダルが残した影響力でしょう。

僕からすれば佐村河内守の耳がどれくらい聴こえるとか、彼が真実を話しているのか嘘をついているのかは別にどうでもいいです。佐村河内守と新垣隆のどっちが悪いとかの話も興味ないです。

事実はどうであれこの映画は、よく言えばミステリアス、悪くいえば怪しい佐村河内守の魅力を十分に伝えることに成功しているし、映画としてとても面白いです。

フジテレビのお偉いさんたちが真面目な顔して、絶対にオモシロおかしくいじったりしないからバラエティー番組に出てくれと依頼をしにやって来たり、海外のジャーナリストがストレートで厳しい質問を浴びせるシーンはリアルでしたね。

それにしてもフジテレビの奴らは本当糞ですね。絶対いじらないって言ってる番組の司会者がおぎやはぎっていうのが笑っちゃいました。

よくもまあ奴らは「番組では過去には一切触れないから」とか平気で嘘をつけますねぇ。できあがった番組の内容がまた正反対で、あれを見たら誰でも人間不信になりますよ。

佐村河内守については賛否両論あるでしょう。ペテン師だとか、虚言癖があるとか、嘘つきだとか様々な厳しい意見もあるでしょう。

障害を売りにするのは確かにどうかと思います。しかしゴーストライターを使っていたことが何が悪いのか僕にはいまだに理解できないんですよ。

共作なのに共作者の名前が掲載されてないとか大騒ぎする奴がいるけど、そういう批判も馬鹿馬鹿しいです。マーケティング的に共作として出したほうが都合がいいならそうするし、そうじゃなかったそうしないだけの話で、そんな例は芸術の世界を見たらいくらでもありますよ。もちろんギャラは払ったうえでの話ですよ。

マイケル・ジャクソンだって楽器とかほとんど自分で弾かないし、頭にあるメロディーを口ずさんで、ピアニストに再現させて曲を作ったりしてたけど、演奏者との共作として曲を発表したりしませんよね。だってマイケル・ジャクソンで売ったほうが売れるに決まってるんだから。

音楽はダメで、本のゴーストライターはOKなんですか? 芸能人の本なんて本人が書いていることのほうが珍しいんじゃないの?

絵画の世界でも有名画家がアシスタントにコンセプトや絵柄の指示だけだして絵を描かせることなんて普通にあるし、だからといってアシスタントの名前のクレジットなんて作品に入らないですよ。もしかしてピカソが91歳まで一人で絵を描いたとか思ってないよね?

有名になって大きな仕事をやるようになったら、自ずと多くの人が携わるようになり、「佐村河内守」が「チーム佐村河内守」になるんですよ。新垣隆はその一員だったというだけの話です。

演奏の才能は新垣隆のほうがあるかもしれない。けれどタレント性やカリスマ性は佐村河内守の足元にも及ばないのは誰も否定できないでしょう。佐村河内守だから売れたんです。新垣隆で面白い映画を撮れるかといったら撮れないでしょ?

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