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ヒトラーの忘れものは斬新な視点の戦争映画!ネタバレと感想

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ヒトラーの忘れもの

終戦後の”戦争”を描いた、人間味とセンス溢れるデンマーク映画。映像よし、ストーリーよし、演技よしの文句なしの良作です。77点(100点満点)

あらすじ

ナチスドイツが降伏した後の1945年5月、デンマークの海岸にドイツ軍が埋めた地雷を撤去するため、ドイツ兵の捕虜が投入される。まだ幼さの残る10代の少年兵たちを監督するデンマーク軍軍曹ラスムスン(ローランド・ムーラー)は、徹底して彼らをこき使おうとする。だが、少年兵たちは誤爆や撤去作業の失敗で次々と命を落とし……。

シネマトゥデイより


文句

2017年アカデミー賞外国語映画ノミネート作品で、ナチスドイツを加害者ではなく”被害者”として描いた珍しい戦争映画。終戦直後のデンマークを舞台に地雷撤去を強制的にさせられたドイツ人少年兵たちと、彼らを監視するデンマーク人軍曹の心の交流を描いています。人間性を感じさせる内容で、登場人物たちの怒り、恨み、復讐、慈悲などの感情をとても上手く表現していました。

これまで欧州のナチス映画といえば、ユダヤ人目線でドイツ側の虐殺の姿ばかりが描かれてきました。それはそれで中には名作もいくつか生まれていますが、どれも似たような話なので、映画としては正直飽き飽きします。

一方でアメリカ映画の戦争ものは結局全部ヒーロー映画になり下がります。邦画だって日本人目線で描かれているので、日本寄りの内容になるのは避けられません。

それにつけてこの映画は、デンマーク人が監督したにもかかわらず、降伏後のドイツ軍に対してデンマーク軍が行った残酷な行為に焦点を当てているのが面白いです。

残虐な行為とは、ドイツ軍がそこら中に埋めて行った地雷を未成年の少年兵たちを使って撤去させる、という作戦そのもので、たとえ誤って地雷を踏んでも憎いドイツ人が死ぬだけだから全く問題ない、というのがデンマーク軍の狙いです。

戦時中、散々ナチスにひどい目に遭わされたデンマーク人たちは当然のごとく強い恨みを抱えていて、たとえ未成年であろうとドイツの軍服を着ている者は宿敵だと考え、容赦なく子供たちに地雷を掘り起こさせるのでした。

地雷撤去のために集められたドイツ人少年兵は総勢で14人。彼らが作業をしているうちに次々と地雷が爆発し、一人また一人と命を落としていきます。そんな少年たちの様子を身近で監督していたデンマーク人の鬼軍曹は、少しずつ彼らに対して情を抱いていく、というのがあらすじです。

大部分のシーンが田舎の海辺で撮影されていて、限られたロケ地だけと少ないキャストだけであれだけの完成度に仕上げるのはすごいです。映像はとても美しく、けれどもその映像美がそれほど目立たないほど、ストーリーに凄みがあります。

地雷の撤去作業の一つ一つにいつ爆発するのか分からない緊張感がありました。映画としてのんびり見ていただけでも、あれだけ緊張するんだから、実際に撤去していた兵士たちのストレスといったら想像に絶しますね。

少年たちの目標はそのビーチにある地雷を全て撤去して故郷に帰ること。一方でデンマーク軍は彼らを返す気などさらさらありません。「この仕事が終わったら国に帰してやる」などといった、守られることのない口約束を信じて、少年たちが命がけで地雷を撤去する姿がなんとも健気で悲しかったです。

建前としては1945年に終戦を迎えても、実際は多くの人にとってはその後もしばらく争いは継続していたんですね。それにしてもデンマーク人の監督が、デンマーク人の悪事を映画で世界に向けて伝えるのにはそれなりに勇気もいただろうし、批判にもさらされるリスクもあったでしょう。

どちらかを一方的に悪と決め付けるのは簡単ですが、一方的なイメージの植え付けによって、埋もれていく別の戦争エピソードは山ほどあるはずです。あえてそこを掘り起こしたマーチン・サントフリート監督は男前ですね。

映画についてはほとんど文句はないけれど、「ヒトラーの忘れもの」という邦題はダメダメです。ヒトラーなんて一度も劇中で言及されていないし、原題は「砂の下」で、英題は「地雷の地」という意味なので全く無関係じゃないですか。変に比喩と含みをもたせたような意味深なタイトルがいかにもイケイケのコピーライターがつけたような気配がして、イラッときます。完全に「ヒトラー」便乗マーケティングです。

>>「ヒトラーの忘れもの」はU-NEXTで視聴できます。

コメント

  1. 加藤 より:

    これまた、参りました。サイト絶賛しすぎか?笑笑 でもなぁ、フィーリング合いすぎなので仕方ねーっすね。あーナチスをこういう描き方するのは衝撃ですね。どんな人間も戦争によって変えてしまう。でも人間性を取り戻すこともじわりと描いていて。地雷除去と少年兵のみに集中して丁寧に描いていて、ハラハラドキドキ、悲しかったり、ほっとしたりが、感心しまくります。長らくこういう史実表現は欧州ではタブーだったんですね。そういう意味でも、感心しました。素晴らしい映画です。