実在した天才スナイパー、リュドミラ・パブリチェンコの戦場での活躍を描いた戦争映画。まるでロシアが「アメリカン・スナイパー」に対抗して作ったかのような映画で、質と内容はどっこいどっこいの代物で、大した見所はないです。38点(100点満点)
ロシアン・スナイパーのあらすじ
1941年、ナチス・ドイツはソ連への侵攻を開始。大学生のリュドミラ・パブリチェンコ(ユリア・ペレシルド)は、その卓越した射撃の才能を見いだされてスナイパーとして戦場に駆り出される。
ナチス兵を次々と狙撃していった彼女は、ナチスに「死の女」と呼ばれて恐れられる一方で、ソ連軍上層部には戦意高揚のシンボルとして利用されていく。黙々と敵の狙撃を繰り返し、彼女は戦場で出会った男性と恋に落ちるが、彼を失ってしまう。やがて戦争は激化し、リュドミラらソ連軍はセヴァストポリ要塞に追い詰められ……。
シネマトゥディより
ロシアン・スナイパーの感想
内容的にリュドミラ・パブリチェンコを追っているだけなので、邦題の「ロシアン・スナイパー」っていうのもあながち間違っていないんですが、「アメリカン・スナイパー」というのが先に出ているだけになんか意識しすぎてる感じがして嫌ですね。これっていかにもパロディー映画がやりそうな題名の付け方じゃないですか。本題は「セヴァストポリの戦い」ですよ。
ストーリーはリュドミラ・パブリチェンコが入隊し、戦場を駆け巡り、上官に恋をして、そいつが死んだらまた他の上官に恋をして、そいつが死んだら今度は一番最初からアプローチしていた医師に心を許すといった戦争恋愛物語風になっています。
途中、上官と男女の仲になると、急に戦場デートさながらキャッキャしながら、チュッチュしたりして、鼻の下を伸ばして殺気のないスキだらけの顔になっていくのがダメでした。僕が上官なら二人とも除隊です。間違ってもお互いの顔に泥を塗りあってはしゃいだりしてはいけません。
美人隊員が入隊したら上官や同僚からのいたずらだったり、セクハラといったことが横行しそうですが、そういった裏側については触れていませんでした。ロシア軍人はあくまでも紳士的で、リュドミラ・パブリチェンコに最初からある種の敬意を払っていたというような描写でしたね。実際はどうだったんでしょうか。
なぜ僕がこの映画を見ようと思ったのかというと、つい最近あるアメリカ人の退役軍人と話す機会があったからです。その人はイラクやアフガニスタンといった本物の戦場を経験しているスナイパーで、長い間スナイパー養成機関の講師をやっていたこともあるそうです。
そんな人と話す機会なんて滅多にないので、僕は目を真ん丸くさせて子供のように根掘り葉掘り戦争のことを聞いてしまいました。幸い戦争の話も嫌いじゃないようで彼はノリノリで語ってくれました。そのときにどうしても聞きたかったことを僕は質問してみました。
「(アメリカン・スナイパーの)クリス・カイルって知ってますか。彼って本当にベスト中のベストなんですか?」。
すると彼はこう言いました。
「クリスのことはもちろんよく知ってるよ。彼はロングレンジの射撃の名手なんだ。でもベストかっていうと違うよ」。
じゃあ誰が最高のスナイパーなんだい?と聞いたとき、彼が挙げたのがこのリュドミラ・パブリチェンコだったのです。なんでもリュドミラ・パブリチェンコの射撃の手法はかなり斬新らしく、アメリカ軍のスナイパー養成の授業でも彼女についてよく触れるそうです。
普通、プライドの高いアメリカ軍人がロシア兵の名前を出しますか? それならそうとよっぽどすごいんだろうなこのリュドミラ・パブリチェンコは、と思ってこの映画を見たわけです。ところが肝心の映画はこのざまです。やっぱり偉人の偉業を映画になんかしちゃダメだということなのかもしれませんね。
いずれにしろ時代も所属する軍隊も違うスナイパーをどうやって比較するんだ、という疑問も残ります。命中率が高いほうがすごいのか、殺した数が多いほうがすごいのか、とか色々比較要素によっても違ってくるわけだし。
ただ、スナイパー本人が「私は309人殺しました」とか自慢しちゃうのってちょっとね。なんかAV男優が「1000人の女とやりました」とかって言うのと同レベルのような気がします。あれ、違うかな?
そういえば僕が話したアメリカ人はこんなことも言っていました。
「クリス・カイルも上手いけど、サージェント・スズキの射撃もすごかったよ」
サージェント・スズキって誰だよって話なんですが、なんでも日系アメリカ人のすごいスナイパーがアメリカ軍にいたそうです。誰も彼については映画作らないんでしょうか。なにしてんだよ日本の映画業界は。早く探して来いよ、サージェント・スズキを。
コメント
誰なんでしょうね、サージェント・スズキ。
検索したけどスズキのバイクしか出ませんでした。
小保方とか佐村河内とか、もうちょっと珍しい名字だったら
まだしも、鈴木じゃわかんないですよね。
塩麹ドルモアさん
コメントありがとうございます。僕も検索したけど無理でした。おっさんのたわ言で、架空の人物っていう可能性もありますね。
主観で文句を書く事を主題とされているのだからそのテーマに対して揶揄するものではないことを先にお伝えします。
「サージェント」は欧米圏での「姓」として使われますが、当然スズキも姓であり、サージェントは下級士官を指す階級または敬称だとわかります。帝国陸軍なら軍曹、または曹長がそれに当たりますが、この時点で簡単に検索でヒットするでしょう。
結論から申し上げると、サージェント・スズキなどと言われる狙撃手は存在しません。お探しのサージェント・スズキは、先の大戦にて沖縄に散った日本帝国陸軍義烈空挺隊、いわゆる特攻部隊として史実に残る実在の部隊を再現したフィギュアの商品名です。「鈴木曹長」は実在しない架空の兵士です。また設定も狙撃兵ですらなく、日本人向けのリップサービスと受け取っても良いかもしれません。米兵に実在するという話は?ですが実在するのならかなり狭域の有名人なのでしょう。
お話しされた退役軍人の方もおそらく、戦争について経験も何の知識もないと悟ってあしらわれたのでしょう。アメリカンジョークはシニカルだけど難解ではなく分かりやすい。調べればすぐにわかるジョークと考えたのならその方に悪意はありませんが。
映画が史実に基づく戦争を描くことは少なくありませんが、それを経験されている方のお話しはあなたが興味深く聞かれたお話と同じく、現実は映画とは異なります。ただ私は、このロシアンスナイパーという映画が、アメリカンスナイパーと同列に置く週刊誌の映画情報に書いてある程度の浅はかなドキュメントであるとは感じることができませんでした。
公に言葉を発する行為は容易くなりましたが、私は、シニカルであることは、ある種の誠実さが必要であると考えます。辛口なコメントも、裏付けがあれば興味深く読むこともできます。攻撃的な発言には反応を避けられているようですが、もし口当たりのよいコメントだけを求めるのなら、論調を改めるとよいかもしれません。
こんにちは。
今、”BITVA ZA SEVASTOPOL”をロシア語版で見ました。
数年前からロシア語講座に通っているので、今回はこれを見るよう課題になっていたのです。
先生が細かく質問し、それで場面を解説してくれたので、内容はロシア語で半分ぐらいしかわかりませんでしたが、ほぼ理解しました。
そうですね、「ロシアン・スナイパー」というタイトルが良くなかったように思います。
でも、映画は素晴らしいと思いました。
もちろん、実在の人物はもっと素晴らしかったのかもしれません。
演じたユリア・ペレシルドは、硬い表情の中にわずかな感情の機微を表現していて優れた役者さんだと思いました。その証拠にこの映画で賞をもらったそうです。
「309人の人間を殺したんですね」と問いかけられて、「人間ではありません、ファシストです」と答えています。
彼女は女性なのに射撃の名手だから、という理由で女を生きられなかったわけですが、そんな彼女にも多少の恋物語があってホッとしました。
泥を塗りあっていたのは、射撃に行くためです。戦場での殺伐たる相手を撃ち殺すという仕事は、一歩間違えば死なわけで、そんな中ではどうしても同士の気持ちが芽生えるもの。上官を演じた俳優もストイックで素晴らしいと思いました。リュドミラは運の強い女だから、あの時結婚していれば彼は助かったのか?などと想像してしまいます。
ナチスに「死の女」と呼ばれたパブリチェンコは、ロシア(当時ソビエト)でも、アメリカでも「聖域」。何より、死を隣り合わせにした極限状態で、自国を勝利に導いてくれるパブリチェンコに手を出そうと勘違いする奴は(あの太っちょをのぞいて)いなかったと思います。ロシアに何度も旅行したことがあるんですが、あの国では男性は女性を敬う伝統があり、素晴らしいと思います。
この映画は、天性の狙撃手として戦場に生きた英雄を描いた優れた作品だと思います。私なら80点ですね。
> 早く探して来いよ、サージェント・スズキを。
日系アメリカ人のすごいスナイパーがアメリカ軍にいたそうですという昔話も面白いですが、陸上自衛隊の現役隊員のスズキさん+イシイさんコンビも居ます。
suzukiで検索すると何ページ目かでヒットします。
この二つの雑誌は、豪州における豪陸軍主催射撃競技会、AASAM14 で第二位を収めた時の記事だと思います。それ以前は成績が振るわず評判が悪いですが、使っているのが狙撃用ではなかったそうで、技術的には昔から桁外れの高水準のようです。
陸上自衛隊は、その後、更に強化して、好成績を維持していますね。
情報ありがとうございます。
スナイパーもの好きなので「お!面白そうじゃない」と思って観ましたがメロドラマでした。もちろんスコアを確認してからなので覚悟はしておりましたが。
戦闘シーンもそこそこ、アクションもあまりなし、戦意高揚国策映画でもなし・・かと言って戦争を痛烈に批判する社会派文芸路線でもなく・・戦場の愛を切々とうたうわけでもなく。
う〜んなんだろ???やっぱメロドラマか。
で、エンドロール見ながら思い浮かんだのは、やっぱ採点具合が絶妙だわ。
そのときのフィーリングのみの採点となっております。