ツォツィ (原題 Tsotsi)


28点(100点満点)

ストーリー
スラム街で育ったツォツィは、ギャングたちに囲まれ、日常的に犯罪に手を染めながら生きていた。ある日、彼は裕福な地区に住む婦人から車を強奪する。逃走中、バックシートに赤ん坊が乗っていることに気づき、ハンドル操作を誤って事故を起こしてしまう。一旦は事故車の中に赤ん坊を残して逃げようとしたが、結局一緒に連れていくことにする。このことがきっかけでツォツィは車強盗としてだけでなく、誘拐犯として警察に追われることになる。

文句
2006年のアカデミー賞外国語映画賞受賞作品。同年の作品賞が「クラッシュ」ということを見ても、この年のアカデミー賞がどれだけひどいレベルだったことが分かる。「ツォツィ」は、スラム街に生まれた、不良少年が赤ん坊を通じて優しい心を取り戻すというよくありがちな更生物語。ただ、あまりにもドラマチックにし過ぎていて、リアリティーのかけらもない。ツォツィは、他の乗客がたくさんいる電車の中で平気で善良な市民を刺し殺すような少年で、車を盗んだ際にも婦人を銃で撃って下半身不随にさせている。そのうえ昔からの仲間のことも、意見が合わないと簡単に殴ってしまうし、ときには殺してしまう。そんなどうしようもない子どもが赤ん坊によって命の大切さを認識するとはとても思えない。映画は、ツォツィが赤ん坊を両親に返しにいくところで終るが、むしろ見たいのはその後の出来事である。スラム街で生まれ育って、犯罪を通じてしか生きていけない少年がどうやって変わっていくのか、なんの仕事に就くのか、この映画は全く触れていない。

日本にも元不良が更生するといった話はいくらでもあるけど、それは元不良でも、贅沢言わなければ仕事に就ける、生きていけるという社会的基盤が日本にあるからなのである。南アフリカのスラム街で生まれ育ったツォツィに仕事はあるのだろうか、刑務所から出てきた少年はどこに行けばいいのか。もしかすると、現実を包み隠すような、社会問題をあえて提起しないような映画じゃないとアカデミー賞は取れないのかもしれない。

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