2016/11/21

リップヴァンウィンクルの花嫁

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何をテーマにしているのかはっきりしない、メルヘンな女性向けの抽象的な映画。前半は面白いのに後半から見事に崩れ落ちていく失敗作で、黒木華にコスプレさせるために撮ったような代物。33点(100点満点)

あらすじ

東京で派遣教員をしている皆川七海(黒木華)は、鉄也とSNSで知り合った後に結婚。結婚式の代理出席をなんでも屋の安室(綾野剛)に頼む。しかし、間もなく鉄也の浮気が明るみに。ところが七海が浮気をしたと義母に責められ、家を出ていくことになる。そんな七海に安室が結婚式の代理出席や、月給100万円の住み込みメイドのアルバイトを紹介。そこでメイド仲間で、型破りで自由な里中真白(Cocco)と出会う。

シネマトゥディより


文句

リリイ・シュシュのすべて」の岩井俊二監督の最新作です。岩井俊二監督のことを知らない人のために解説しておくと、一昔前までは「天才」ともてはやされ、俳優たちが口をそろえて「岩井監督の作品に出たい」と言っていたけれど、最近になってみんなが「冷静に考えたらそれほどでもなかったね」と気づいた監督です。

女性受けを狙って映画を撮る傾向があり、岩井俊二の世界といえば「美しさ」と「せつなさ」と「淡さ」で溢れています。登場人物たちは学業や仕事に追われることなく、愛や友情のためにマイペースに生きていて、そこに焦りも後ろめたさもない暢気な人たちばかりで、「私たち今を生きてますから」とでも言わんばかりです。

この物語は、皆川七海(黒木華)がネットで知り合った旦那と結婚し、結婚式に出席する親族が少ないからといって代理出席サービスをなんでも屋の男、安室(綾野剛)に頼んだことから人生が狂い始め、転機とも転落ともいえるヒロインのシュールな生活を描いています。

皆川七海(黒木華)は離婚し、やがて路頭に迷って自分まで代理出席サービスをすることになり、そこでAV女優の里中真白(Cocco)と出会いますが、そこからは見るに値しないほどリアリティーを失い、話が面白くなくなっていきます。

Cocco

だってこんなAV女優いますか? 年齢も旬を越えているし、そもそも全然エロくないじゃないですか。里中真白(Cocco)のマネージャー役の女優のほうがよっぽどスケベでしたね。

それでも岩井俊二のメルヘンな世界の中では里中真白(Cocco)がAV女優という設定で十分に通用するらしく、それもかなりの売れっ子で、西洋風のこんな大きなお屋敷に住んでいたりします。

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そしてこのお屋敷で皆川七海(黒木華)がメイドとして働けば月100万円もらえるそうです。なんだそりゃ。この辺りからストーリーはAV女優と、内気で真面目で大人しいヒロインの友情の物語に様変わりしてしまい、黒木華にメイド服を着させたり、ウェディングドレスを着させたり、喪服を着させたりして、サラリーマン中年男性をターゲットにしていきます。

全体の雰囲気が女性的でメルヘンなのに、あざとくサラリーマンもターゲットに含めようとした映画はどうなるかといえば、当然チンプンカンプンな内容になるわけで、その先の展開は、どんなポジティブシンキングの能天気野郎をもってしても説明がつかないと思います。

一番しっくりこないのが、何でも屋の安室(綾野剛)の目的は一体なんなのか、ということです。あれでただ一発やりたいだけだったら、まだ分かりやすくていいんですが、そんな素振りは一切見せないし、かといってお金のためならなんでもする悪党でもない、というあのキャラが中途半端です。

一つ強いて褒めるとしたら、キャスト全員の演技がとても自然で、綾野剛ですら役にはまっていました。これでもしストーリーが自然だったらかなりのいい作品になっていたことでしょう。もしかしたらリアリティーがあった前半部分は別の監督が撮っていて、メルヘンになる後半だけ岩井俊二が撮ったんじゃないの、とすら思えてきます。こんなに途中から急につまらなくなる映画も珍しいですよ。

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