何をテーマにしているのかはっきりしない、メルヘンな女性向けの抽象的な映画。前半は面白いのに後半から見事に崩れ落ちていく失敗作で、黒木華にコスプレさせるために撮ったような代物。33点(100点満点)
リップヴァンウィンクルの花嫁のあらすじ
東京で派遣教員をしている皆川七海(黒木華)は、鉄也とSNSで知り合った後に結婚。結婚式の代理出席をなんでも屋の安室(綾野剛)に頼む。しかし、間もなく鉄也の浮気が明るみに。ところが七海が浮気をしたと義母に責められ、家を出ていくことになる。そんな七海に安室が結婚式の代理出席や、月給100万円の住み込みメイドのアルバイトを紹介。そこでメイド仲間で、型破りで自由な里中真白(Cocco)と出会う。
シネマトゥディより
リップヴァンウィンクルの花嫁の感想
「リリイ・シュシュのすべて」、「花とアリス」、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」、「ラストレター」の岩井俊二監督のファンタジードラマ。
岩井俊二監督のことを知らない人のために解説しておくと、一昔前までは「天才」ともてはやされ、俳優たちが口をそろえて「岩井監督の作品に出たい」と言っていたけれど、最近になってみんなが「冷静に考えたらそれほどでもなかったね」と気づいた監督です。
女性受けを狙って映画を撮る傾向があり、岩井俊二の世界といえば「美しさ」と「せつなさ」と「淡さ」で溢れています。登場人物たちは学業や仕事に追われることなく、愛や友情のためにマイペースに生きていて、そこに焦りも後ろめたさもない暢気な人たちばかりで、「私たち今を生きてますから」とでも言わんばかりです。
この物語は、皆川七海(黒木華)がネットで知り合った旦那と結婚し、結婚式に出席する親族が少ないからといって代理出席サービスをなんでも屋の男、安室(綾野剛)に頼んだことから人生が狂い始め、転機とも転落ともいえるヒロインのシュールな生活を描いています。
皆川七海(黒木華)は離婚し、やがて路頭に迷って自分まで代理出席サービスをすることになり、そこでAV女優の里中真白(Cocco)と出会いますが、そこからは見るに値しないほどリアリティーを失い、話が面白くなくなっていきます。
だってこんなAV女優いますか? 年齢も旬を越えているし、そもそも全然色っぽくないじゃないですか。里中真白(Cocco)のマネージャー役の女優のほうがよっぽど色気ありましたよね。
それでも岩井俊二のメルヘンな世界の中では里中真白(Cocco)がAV女優という設定で十分に通用するらしく、それもかなりの売れっ子で、西洋風のこんな大きなお屋敷に住んでいたりします。
そしてこのお屋敷で皆川七海(黒木華)がメイドとして働けば月100万円もらえるそうです。なんだそりゃ。この辺りからストーリーはAV女優と、内気で真面目で大人しいヒロインの友情の物語に様変わりしてしまい、黒木華にメイド服を着させたり、ウェディングドレスを着させたり、喪服を着させたりして、サラリーマン中年男性をターゲットにしていきます。
全体の雰囲気が女性的でメルヘンなのに、あざとくサラリーマンもターゲットに含めようとした映画はどうなるかといえば、当然チンプンカンプンな内容になるわけで、その先の展開は、どんなポジティブシンキングの能天気野郎をもってしても説明がつかないと思います。
一番しっくりこないのが、何でも屋の安室(綾野剛)の目的は一体なんなのか、ということです。あれでただ一発やりたいだけだったら、まだ分かりやすくていいんですが、そんな素振りは一切見せないし、かといってお金のためならなんでもする悪党でもない、というあのキャラが中途半端です。
一つ強いて褒めるとしたら、キャスト全員の演技がとても自然で、綾野剛ですら役にはまっていました。これでもしストーリーが自然だったらかなりのいい作品になっていたことでしょう。
もしかしたらリアリティーがあった前半部分は別の監督が撮っていて、メルヘンになる後半だけ岩井俊二が撮ったんじゃないの、とすら思えてきます。こんなに途中から急につまらなくなる映画も珍しいですよ。
コメント
初めてコメントさせて頂きます。
TVでこの映画のCMを見て、あらすじだけ知りたかったので知れて良かったです!
かなり前に岩井俊二監督の”四月物語”
を観て、(何が言いたいのかな‥オチがない。)と退屈に感じたことがありました。
ですので今回映画男さんの評価を読んで凄くスッキリしました!
何て分かりやすい解説なのでしょうか。
一言お礼が言いたくて。
ありがとうございました。
みかんさん
お役に立てて嬉しいです。
映画男さんこんにちわ。
マネージャー役の女優は元AV女優の夏目ナナさんです。
日本のAV史に残るだろう人気女優だったんですよ。
さすがに見る目がありますね。
kojiさん
そうだったんですね。知りませんでした。さっそくAV探してみてみます。
読ませていただきました。
リアリティーのある映画が好みのようですね。
簡潔に感想が書いてありと大まかには
分かりやすかったです。
1つ気になったのが
真白のがAV女優の
それもかなりの売れっ子でって
劇中売れっ子感ありましたか?
私は企画ものとか体を張る仕事ばかりしていてそんなに仕事取れてない感じでした
マネージャーにももっと安い住まいに引っ越す様に言われてたし。
売れっ子ならどんなに豪遊しても預金もあるはずだし早々に仕事取れなくても住み替える必要ないと思うので。
それもかなりの売れっ子の一文引っ掛かりました。
えらそーに講釈垂れてる割にはドヤ顔で突っ込むのがソコ!?って感じwww
coccoがAV女優に見えない?AV女優ったってイロイロいるんだよ。旬を過ぎたのもね。じゃぁ真白=グラビアアイドルとかだったら納得できたってわけwww?
真白は若い頃売れっ子で今は落ち目で熟女ものとか企画ものやってる。真白の年齢設定が40歳くらいとして、20年近くやってるからお金はそれなりにある。あの家に3ヶ月くらい住んで、安室に1000万、母親に500万?渡すぐらいは持っててもおかしくない。マネージャーの話からそろそろ底を付いてきてるかんじもある。
もう死ぬの分かったから最後に散財してる。って事でどうでしょうか?
よそ見でもしながら映画を見たか、ただ理解力がないだけなのか分からないが、少なくともあなたが語っているような安っぽい映画ではないということだけは言っておく。なにがテーマに描かれているか分からない?こんなにもはっきりとしているのに何故わからないのか理解に苦しむよ。現実世界と非現実世界の2つを1人の主人公を軸に実にわかりやすく描かれている。前半の現実世界での主人公と後半の非現実世界の主人公の変化もとても解りやすい。そして、安室の心情が描かれていないので何者なのか目的はなんなのか謎と言うが、それは岩井俊二監督の実力不足ではなくわざとそのように描いているんだよ。あくまでスポットライトを当てているのは主人公であって、安室はそれを引き立たせるただの脇役。目立ちすぎてもよくないだろうからああいう使い方をしてるんだろう。これだけ映画を理解せずに頭の悪い批評をしている人を久々に見た気がするよ。Twitterで中身のない感想言い合ってる若者じゃないんだからさ( 笑 )もう少し映画をきちんと見なさい。
はじめまして。
今日この映画を見ました。
見終わって、イライラというか何かもう大きな声で「つまらない!!」叫びたくなるほど、つまらない映画だと思いました。
映画男さんと殆ど同じ感想です。
画も演技も自然な感じで良いのです。
ですが、なんて言うか、継ぎ接ぎだらけの映画という印象です。
他の人はどういう感想なのか気になりネットを見たら、意外に高評価なんですよね。深く掘り下げた解説もあったりして、、そして謎解きになってたり・・・
心にも響きませんでした・・残念です。主要人物たちの演技が素晴らしいので場面では擽られそうになりましたが、予告編を見たときのような感じしかないです。無理に感情移入させられる感じです。
主人公は誰だったのでしょう?
あんな性格の主人公が、ありえない経験をどんどんしてるのに、唯そこに居ただけの存在になっていて・・・。
展開というか演出に無理があるのか、ありきたりの設定に突拍子もない演出、そして平和な感じのEnding・・・
あざとさすら感じてしまう創り・・・
何を見たんだろう?
るいさん
コメントありがとうございます。曖昧すぎて、しっくり来ない映画ですよね。
ここの主は女なのかな?自分に都合の悪いコメントには返信せず、共感してくれるコメントには返信して。文句を言う割にメンタル弱いなぁ(笑)わざわざこんなサイト立ち上げるくらいだからもっとマシなこと言うのかと思いきや期待はずれ。自己満足したいならどうぞTwitterへ行ってらっしゃい(笑)
ことりばこさんへ。
安室が何者で目的は何なのかは映画で全部説明してありますよ。
彼には目的しかないんです。だからそれ以外は描く必要がないのです。それだけです。はっきりしています。脇役ではありません。
映画男さん、おっしゃる通り、真白が売れっ子とは考えにくいですよね。マニアックな路線ならともかく。どちらにせよ大金を稼げるとは思いません。
月100万円は真白がだしたとは限らないということです。
AV女優と何も知らない女が死ぬのを見たい人からの依頼があったんです。そのために、安室がこの屋敷と真白と七海を用意したんです。もちろんそこから金を取っています。安室のことなので、そうゆうことも充分に考えられます。
批判的なコメント無視して良いです。
私もこの監督の映画はどれも同じ雰囲気に見えてしまうので、ワンパターンに見えてしまいます。
特に美意識が強すぎて内容が浅はかに見えるというアンバランスな。
折角の素晴らしいストーリーも美意識ばかり強めると内容が霞んでしまいます。
黒木華のための映画です。
映画男さんの言うとおり、黒木華にコスプレさせるための映画です。
そもそも映画その物が黒木華のためにあるのです。映画という芸術は、黒木華の出現を予言して作られた物だという事を忘れはならない。
もう!これは、最高傑作!それだけ黒木華を全面に押し出してます。さすが岩井監督。
それにしても、幕が上がるの、黒木華の演技!ひどいね!